2026.09.15
上司の背中は見える。では、自分の背中は見えているか ――組織の現実をつくっているのは、「誰か」だけではない
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
「あの上司には、ついていけない」 「あの人は、口では人を大切にすると言いながら、結局は数字しか見ていない」 「あんな上司にはなりたくない」 職場では、上司について多くの言葉が交わされる。上司の言動は目につきやすい。責任を取るのか、逃げるのか。部下の意見を聴くのか、自分の考えを押しつけるのか。失敗した人間を支えるのか、責めるのか。 部下は、思っている以上によく「上司の背中」を見ている。
上司の言葉より、上司の背中から人は学ぶ
「挑戦してほしい」と言いながら、失敗した部下を責める。
「本音を言ってほしい」と言いながら、自分への異論には不機嫌になる。
「人を大切にしよう」と言いながら、忙しくなると部下との対話を真っ先に削る。
このような職場で、人は何を学ぶだろうか。
理念でも、研修資料でもない。
「失敗しない方がいい」
「本音は言わない方がいい」
「結局、数字が一番大切なのだ」
という現実を学ぶ。
これは単なる印象論ではない。
職場における社会的学習の研究では、人は上位者の行動を観察し、その行動を模倣することが古くから確認されている。1977年の研究では、七つの組織に所属する141組の上司・部下を調べ、部下が「有能で成功している」と認識する上司ほど、その行動様式が部下に模倣されやすいことが示された。
さらに2024年に公表された職場学習に関する40本の研究レビューでも、リーダーの「模範となる行動」「関係的支援」「意味をともにつくる働きかけ」が、個人やチームの学習に強く関係することが整理されている。
つまり、「上司の背中から学ぶ」という表現は比喩ではない。
人間は、本当に背中から学んでいるのである。
しかも、良いものだけではない。
ホテル業界の62チーム・409人を対象とした研究では、上司が顧客に無礼な態度を取ると、部下も顧客への無礼な行動を示しやすくなることが確認された。上司の態度を見た部下の中で、「顧客を軽く扱ってもよい」という認識が形成され、それが行動へとつながっていた。
上司の背中は、仕事を教える。
同時に、「この職場では、何をしてもよいのか」という暗黙のルールまで教えているのである。
CHANGE
2026.07.28
2026.08.25
2026.09.01
2026.08.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
フォローして齋藤 秀樹の新着記事を受け取る