AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその最終回。
思考が「太い/細い」・「厚い/薄い」
今日のビジネス現場では、生産性や効果・効率性の向上が声高に叫ばれています。それに伴い、デジタル技術を用いたツール類も日々めざましい進化を遂げています。その結果、たしかに業務処理の量やスピードは格段に増しつつあります。しかしその間、人間の考える力はどうなっているでしょう……。
企業の研修現場で20年以上キャリアのマインドセット研修や思考スキル研修をやってきた私の感じるところでは、ある面でビジネスパーソンたちの考える力は「鋭く」なっているところがあります。しかし全体からすれば、考える力が「細く、薄く」なっているのではないかというのが実感です。
思考が「太い/細い」、「厚い/薄い」ということの説明用に描いたのが下図です。思考Aと思考Bは両極の形を示しています。だれしも自分の思考状態はこの間のどこかになります。

理想形は思考Bです。跳ぶためにはいったん身をかがめなくてはならないのと同じく、直面する課題やミッションに対し、すぐに処し方に走らず、まずは抽象次元に思考をかがめ、在り方に考えを巡らせる。そしてそこから具体策を練る。これが思考の幹を太くし、運動幅を厚くするプロセスです。
しかし日々のビジネス現場は、思考Aのように一足飛びに効果、効率、功利を狙いにいきます。その結果、コストダウンをどうするか、競合品の分析をどうするか、広告の効果をどう上げるか、などの具体次元での対応策についての考える力はどんどん鋭くなっていきます。しかしその一方、直接的に課題処理に結びつかない抽象次元での意味や価値を扱う思考力は敬遠、放置されたままになっているのが現状です。
「考える主体者」にとってAIは道具
目の前の課題や処理作業に対し、手っ取り早く具体策を出して成果をあげたいという欲求は当然起こります。ましてや生産性を上げよという組織からの圧力は高まる一方です。そんなときに、生成AIツールは救世主のごとく現れました。この諸刃の剣ともいえるツールをどう使いこなすかは、個々の人間にとっても、人類全体にとっても大きな問題です。
私たち1人1人は「考える主体者」でなくてはなりません。考える主体者であるとは、考えるベクトル、すなわち考える熱量と方向性を持ち、その思考によって得た答えで状況を切り開き、何かを実現するという状態です。このとき、生成AIは考えることの補助・補強を行う手段となります(下図の左側)。
AI時代 人間に残される思考は「概念的思考」になる
2026.08.15
2026.08.17
2026.08.24
2026.08.29
2026.09.01
2026.09.10
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。
フォローして村山 昇の新着記事を受け取る