下山の哲学 ――高島福岡市長の背中から考える、GOOD LEADERの条件

2026.08.26

組織・人材

下山の哲学 ――高島福岡市長の背中から考える、GOOD LEADERの条件

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

山に登るとき、人は頂上を見る。 どこまで高く登れるか。どれほど険しい山を制することができるか。そして、山頂からどのような景色を見ることができるか。登山の物語は、多くの場合、「登ること」を中心に語られる。 しかし、山頂は終着点ではない。そこは折り返し地点でもある。登った人間には、自らの足で山を下り、次の場所へ戻っていくという、もう一つの仕事が残されている。 2026年8月、福岡市の高島宗一郎市長が、11月に行われる市長選挙に立候補しないことを表明した。そのニュースに触れながら、私は、リーダーシップにも同じことが言えるのではないかと考えていた。

後継者がいないということは、誰の問題なのか

これは日本企業にとって決して抽象的な話ではない。

帝国データバンクが約27万社を対象に行った2025年の調査では、日本企業の後継者不在率は50.1%だった。7年連続で改善しているとはいえ、いまだに約半数の企業で後継者が「いない」あるいは「未定」である。中小企業庁も、中小企業経営者の60歳以上が過半数を占めていると報告している。

一般にはこれを「後継者不足」と呼ぶ。

もちろん、人口減少や家業を継ぐ人の減少など構造的な要因は大きい。

しかし、リーダーシップという視点から見ると、別の問いも浮かぶ。

後継者がいないのか。それとも、後継者が育つ組織をつくってこなかったのか。

長年、すべてを社長が決めてきた会社で、ある日突然、「誰か次をやってくれ」と言われても難しい。

意思決定を任せたことがない。失敗する機会も与えていない。経営について考えさせたこともない。それなのに60代、70代になってから「後継者がいない」と嘆く。

その問題を、若者の責任だけにできるだろうか。

人は、肩書きを与えた瞬間にリーダーになるのではない。

任され、失敗し、考え、支援され、また挑戦する。その時間の中で育っていく。

だから後継者育成とは、引退直前に始める人事施策ではない。

リーダーに就任したその日から始まる、長い「下山準備」なのである。

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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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