2026.08.26
下山の哲学 ――高島福岡市長の背中から考える、GOOD LEADERの条件
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
山に登るとき、人は頂上を見る。 どこまで高く登れるか。どれほど険しい山を制することができるか。そして、山頂からどのような景色を見ることができるか。登山の物語は、多くの場合、「登ること」を中心に語られる。 しかし、山頂は終着点ではない。そこは折り返し地点でもある。登った人間には、自らの足で山を下り、次の場所へ戻っていくという、もう一つの仕事が残されている。 2026年8月、福岡市の高島宗一郎市長が、11月に行われる市長選挙に立候補しないことを表明した。そのニュースに触れながら、私は、リーダーシップにも同じことが言えるのではないかと考えていた。
成果を出せなくなったから、去るのではない
高島宗一郎氏は2010年、36歳で福岡市長に初当選した。それから4期16年。高島市政への政治的評価には当然さまざまな見方がある。しかし、少なくとも数字を見れば、この16年間に福岡という都市が大きく成長してきたことは否定しにくい。
福岡市の人口は現在167万人を超えている。市税収入も過去最高を更新し続け、2026年度には4,200億円を超える見込みである。2024年度の開業率は4.9%で、政令指定都市と東京23区を合わせた21大都市で1位となった。国家戦略特区を活用したスタートアップ政策、天神ビッグバン、地下鉄七隈線の延伸など、この16年間に福岡という都市の姿が変わったことは確かである。
だからこそ、今回の不出馬は興味深い。
選挙に勝てなくなったからでも、健康上の理由でもない。高島市長自身、「やりたいことはまだまだあります」と語っている。それでも、「次の世代にたすきをつなぎたい」と決断した。さらに、「できるならばこれからもずっと本当は福岡市長として居続けたいのが本音」とまで明かしたうえで、新しいリーダーが新しい風を吹き込み、新しい人材が活躍する方が、市役所という組織にとっても福岡市という街にとっても健全だと説明している。
ここには、リーダーシップについて考えるうえで非常に重要な逆説がある。
「まだできる」ということと、「まだ自分がやるべきだ」ということは、同じではない。
むしろ本当に成果を上げてきたリーダーほど、この二つを区別することが難しい。
成果を出している。支持されている。経験もある。構想もある。周囲からも「続けてほしい」と言われる。それなら続けることには、いくらでも合理的な理由を見つけられる。
だからこそ、下山は難しいのである。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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