AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその3つめ──「類推」。
類推はつかんだ本質を押し広げていくこと
類推とは、物事Aと物事Bの間に類似性を見出し、その似ている点をもとにして何かをおしはかることです。論理用語では「アナロジー」と言います。
私たちは生きていくうえで、未知のことへの試みを避けるわけにはいきません。そのときに類推という思考はとても大切なものです。すでに体験した物事Aから本質を引き出し、それを未知の物事Bに共通性として適用することができれば、リスクを減らしながら、未知の試みに対する成功確率を上げることができるからです。
そのように、類推とはつかんだ本質を押し広げていくことと言い換えてもいいでしょう。

類推という思考のはたらきが生み出すものとして寓話をあげることができます。寓話というのは人生の教訓をいろいろに含んでいます。例えばイソップ物語の1つ『北風と太陽』。左スライドのように、寓話から引き出す本質的メッセージを共通性として、生活や仕事、社会にいろいろと当てはめることができます。
そしてこの類推における思考の流れも、コンセプチュアル思考の基本の流れである「π(パイ)の字思考プロセス」とみることができます。

同様に、ケーススタディ学習も類推です。新聞をざっとながめていて、自分がかかわる業界とはまったく縁遠い業界の会社がある工夫をして見事な成功を収めたという事例に接します。その成功要因を探っていくと、「あ、これって自社にも共通に有効かもしれない。応用してみよう」とひらめくときがあります。

また、ロールモデルから学ぶのも類推です。ロールモデル(role model)とは「その役割を果たす模範的な存在」をいいます。「あの人のようになりたい」と思い、その人の行動や考え方から模範要素を引き抜き、それを真似ることは自分を成長させる効果的な方法の1つです。
加えて、ロールモデルを持つことによって行動のヒントを得るだけでなく、彼/彼女から情熱ももらえるかもしれません。情熱は伝染するからです。

このように世の中の事象は、そこから何かを引き出そうとする思考態度をもってながめれば、いろいろとヒントを明かしてくれるものです。
ですから、この世界を漫然と見過ごすのではなく、「この現象の奥にある基本原理は何だろう」「この出来事は本質的にどう自分とつながっているのだろう」「この事例から何を教訓として引き出せばいいのだろう」といった類推という名の思考態度をつくることが重要です。
AI時代 人間に残される思考は「概念的思考」になる
2026.08.15
2026.08.17
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。
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