十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

2018.02.17

開発秘話

十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/十八世紀、メイソンリーという新たな国際ネットワークの中で、新旧両教の対立は大きく構図を変え、北米、南米、エジプトへの近代十字軍の構想とともに、えたいの知れない山師たちが各地で暗躍するようになる。/

「それ以来、スヴェーデンボリは、霊たちといろいろ語り合うんだが、その霊たちによれば、神聖なのは神さまだけで、自分たちは聖霊ではない、と言ったとか」「聖霊でも、亡霊でもない霊ねぇ……」「いや、かつてこの世に生きて死んだこともあるが、死んでもまだ生きているやつらだ。だから、亡霊と言えば亡霊だが、もともと生きたり、死んだり、というのは、大したことではないらしい」「プラトンの言う永遠の霊魂、地球外知的生命体、みたいなやつなのかな?」「ああ、実際、そいつら、自然だの、天界だの、宇宙だの、いろいろ語ったらしい。ただ、困ったことに、その話が、カトリックとも、プロテスタントとも、似ていないんだ。もっともまずいのが、新旧両教ともに中核としている三位一体論に対して、新説を唱えたこと」「新説って、否定したということか?」「あくまで新しい三位一体論だな。つまり、神に三つの位階があるのではなくて、一つの神が、そのままあれこれやった、たとえば、創造主はイエスとして世界と和解した、てなことになる。だから、我々も同じように自分の中の聖霊によってこそ救われるのだ、って」「イエスの贖罪で救われるんじゃないのか?」「スヴェーデンボリだと、違うらしいぞ」「それじゃ、イエス=キリスト(救世主)じゃないじゃん。キリスト教じゃないだろ」「でも、聖霊=キリストだ。パウロ教とはかな違うけどね。それどころか、彼の日記だと、パウロは地獄に墜ちた、とまで書いてある。まあ、ルターの一般信徒霊媒主義を突き詰めていけば、こんな風にならざるをえなかったんだろう」

「だけど、こんなんじゃ、ルター派でも異端だろ?」「もちろん。でも、彼は一七四九年、六一歳のとき、匿名で『アルカナ・セレスティア』(天上の秘密)」を出版し始めた。出足は鈍かったが、これがあちこちのメイソンロッジで話題になり、爆発的に流行することになる。それで、教皇ベネディクトゥス十四世は、五一年、メイソンリーに対し、さらに激しい破門回勅を発令した。でも、このころ、大国のほとんどの高位高官がどこかしらのロッジに関与し、旧教側のイエズス会士たちですら入会しているような状況だった」「メイソンは、カトリック以上の存在になってたんですね」「話はそう簡単でもない。オーストリア継承戦争中にの四五年にカトリック・ジャコバイトの僭称王チャールズ三世が大反乱を起こして失敗したりしたもんだから、あちこちのロッジで、カトリック・ジャコバイトはお断り、とばかりに、スコットランド人やアイルランド人の差別的な入会拒否が起きていた。なのに、ロンドン大ロッジは、その入会拒否問題になんの手も打たなかったものだから、五一年、アイルランド大ロッジとスコットランド大ロッジが合同してロンドンのカトリック系ロッジも吸収し、「古式(アンシェント)大ロッジ」を建てた」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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