【連載】人を育てるという仕事 ― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ― 第4章 研修を設計するという仕事 教育担当になって間もない頃、私は一つの疑問を持っていた。
【連載】人を育てるという仕事
― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―
第4章
研修を設計するという仕事
教育担当になって間もない頃、私は一つの疑問を持っていた。
「なぜ、これほど良い研修なのに成果が出ないのだろう。」
講師の評判はいい。
教材も充実している。
受講者のアンケートも高評価。
それでも現場は変わらない。
この違和感が、私の考え方を大きく変えるきっかけになった。
私はある時から、「研修を作る」という言葉を意識して使わなくなった。
代わりに使うようになった言葉がある。
**「研修を設計する」**である。
この二つは似ているようで、実はまったく違う。
「作る」は研修当日がゴールになる。
しかし「設計する」は、研修が終わった後まで考える。
受講者は、どんな状態で研修に参加するのか。
研修中に何を感じるのか。
職場へ戻った翌日、どんな行動を起こすのか。
その行動を上司はどう支援するのか。
数か月後、どのような成果につながるのか。
そこまで描いて初めて、私は「研修を設計した」と言えるのだと思っていた。
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2014年の『人材教育』の記事でも、研修開発のプロセスについて紹介していただいた。
しかし実際には、それは単なる研修開発ではなかった。
一つのプロジェクトだったのである。
まず現場の課題を把握する。
必要な能力を整理する。
対象者を明確にする。
ゴールを決める。
プログラムを設計する。
講師と何度も打ち合わせを重ねる。
教材を改善する。
研修を実施する。
受講者の反応を確認する。
職場での変化を追いかける。
改善点を次回へ反映する。
この流れを何度も繰り返していた。
だから私にとって研修とは、一日限りのイベントではなかった。
改善し続けるプロジェクトだったのである。
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研修には「正解」がない。
同じプログラムでも、受講者が変われば反応は変わる。
時代が変われば課題も変わる。
だから私は、「完成した研修」という言葉を使わなかった。
毎回改善する。
毎回見直す。
毎回現場へ戻る。
その積み重ねだけが、教育の品質を高めていく。
教育担当者の仕事は、研修を実施することではない。
研修を進化させ続けることだと考えていた。
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もう一つ、大切にしていたことがある。
それは、講師との関係だった。
私は講師を「依頼する相手」と考えたことはない。
一緒に教育を創る仲間だと思っていた。
だから打ち合わせにも時間をかけた。
現場では何が起きているのか。
受講者は何に悩んでいるのか。
この研修で一番伝えたいことは何か。
それらを共有しなければ、本当に現場に届く研修にはならない。
講師の経験と、教育担当者が持つ現場情報。
その二つが重なった時、初めて価値ある研修が生まれる。
私はそう信じていた。
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設計という言葉には、もう一つ意味がある。
それは、「研修だけを設計しない」ということである。
受講前に上司へ何を伝えるか。
研修後にどんなフォローを行うか。
現場で実践する機会をどう作るか。
評価をどう行うか。
こうした一連の流れがつながって初めて、人は成長する。
研修当日の六時間だけを設計しても、人材育成は完成しない。
だから私は、教育全体を一つの仕組みとして考えていた。
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2026年の今、生成AIによって教材づくりは驚くほど効率化された。
研修資料も短時間で作れる。
ケーススタディも作れる。
演習問題も自動生成できる。
しかし、それだけでは教育にはならない。
何を学ぶのか。
なぜ学ぶのか。
学んだことを、どう現場につなげるのか。
ここは、今も教育担当者が設計しなければならない。
AIは教材を作ることはできても、人の成長を設計することはできない。
そこに、人材育成という仕事の価値がある。
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私は30年以上、人材育成に携わってきた。
振り返ると、作っていたのは研修ではなかった。
人が成長する「きっかけ」と「仕組み」を設計していたのだと思う。
だから今でも、教育担当者という仕事は「企画職」ではなく、
未来を設計する仕事だと考えている。
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次章予告
第5章では、『人材教育』でも紹介された「教育品質」をテーマに、研修の品質をどのように高め、どのように改善し続けたのかをお話しします。
教育は一度作れば終わりではありません。品質を磨き続けることこそ、教育担当者に求められる重要な役割でした。
人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
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