十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

2018.02.17

開発秘話

十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/十八世紀、メイソンリーという新たな国際ネットワークの中で、新旧両教の対立は大きく構図を変え、北米、南米、エジプトへの近代十字軍の構想とともに、えたいの知れない山師たちが各地で暗躍するようになる。/


心霊術の流行

「一種のニヒリズムだな」「なんの話だ?」「結婚だけじゃない、身分も、王制も、キリスト教の神も信じないという連中が、十八世紀半ばのフランスにはおおぜい出てきた。有力者の愛人たちから集めた情報で株式投資サロンを開いて大儲けをしていたタンサン女男爵なんて、その典型。ポンパドゥール女侯は、一般市民ながら幼少から才気溢れ、タンサン女男爵のサロンで学んだ後、エティオール夫人としてわずか二四歳で四五年に自分のサロンを開き、みごとに三五歳の国王ルイ十五世の寵愛を射止めて、ポンパドゥール侯領を与えられ、公妾として宮廷に入り込み、サロンの友人たちと浪費の限りを尽くした。タンサン女男爵のサロンを四九年に継承したマダム・ジョフランも、一般市民ながらオーストリア女大公マリアテレジアやロシア女皇エカチェリーナ二世とも交流し、画家や建築家も招いて、百科全書出版の最大の支援者だった。一方、同じころのドゥファン侯爵夫人のサロンは、愛人のヴォルテールともに、身分を越えた、洗練された社交精神を博して人気となった。マンハイム市郊外出身でパリ市に移住したドルバック男爵は、五〇年には、町中のロワイヤル通り八番地の自宅で、男だらけの無神論の百科全書サロンを開いている」「そういうところから、革命の気風が醸成されてきたんしょうね」

「その一方で、全臨神の信仰だの、降霊術のサロンだのも、大流行し始める。神が自然物でないにしても、とにかくそこら中にいる、っていうのは、汎神論だし、それがロゴス(論理)として自然物を支配しているっていうのは、理神論だ。それで、人間的で感情的な創造主だの、人だか神だかよくわからないイエスの話は横に置いておいて、近代科学は、全臨神としての聖霊の信仰と結びついていったんだよ。そのうえ、すごいのが出て来た。スウェーデン・ストックホルム市のルター派教会宮廷牧師の息子、スヴェーデンボリ。彼は敬虔なルター派信徒で、熱狂的なニュートン主義科学者だった」「あらら、つまり、聖霊霊媒主義と汎神理神論が彼によって結びついてしまったってわけか」「彼は、ずっと夢の中で悪霊だの、亡霊だの、天使だのに囲まれてきたんだそうだ。そして、一七四四年のイースターの晩、いよいよイエスの霊が現れ、出航健康証明書は持っているか、おまえの約束したことを行え、って言ったんだと」「えーと、イエスの霊って、亡霊ですか?」「はりつけにされて死んだんだから、亡霊だろ」「でも、生き返りましたよ」「じゃあ、生き霊かな」

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。