教育担当者の仕事とは何か 「教育担当者の仕事は何ですか。」 30年以上この仕事に携わってきたが、この問いほど答えるのが難しい質問はない。 研修を企画する人。 講師を手配する人。 教材を作る人。 年間計画を立てる人。 どれも間違いではない。 しかし、どれも本質ではない。
【連載】人を育てるという仕事
― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―
第6章
教育担当者の仕事とは何か
「教育担当者の仕事は何ですか。」
30年以上この仕事に携わってきたが、この問いほど答えるのが難しい質問はない。
研修を企画する人。
講師を手配する人。
教材を作る人。
年間計画を立てる人。
どれも間違いではない。
しかし、どれも本質ではない。
私がたどり着いた答えは、もっとシンプルだった。
教育担当者とは、人が育つ環境をつくる人である。
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教育担当になった当初、私も研修を「提供すること」が仕事だと思っていた。
年間スケジュールを作る。
対象者を決める。
講師と打ち合わせをする。
会場を準備する。
無事に研修を終える。
教育担当者として必要な仕事であることに変わりはない。
しかし、それを何年も続けるうちに気付いた。
研修を実施しただけでは、人は育たない。
研修は、あくまでも成長のきっかけにすぎない。
本当の成長は、その後の職場で始まる。
だから教育担当者は、研修だけを見ていてはいけない。
職場を見なければならない。
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私は、教育担当者の仕事は「教育部門」の中だけでは完結しないと思っていた。
現場へ行く。
管理職と話す。
若手社員の声を聞く。
時には経営層とも議論する。
人材育成は、人事部門だけの仕事ではない。
会社全体で取り組むテーマである。
その中心で、人と人をつなぐ役割を担うのが教育担当者だと考えていた。
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教育担当者には、専門知識も必要である。
教育工学。
成人学習。
研修設計。
ファシリテーション。
評価手法。
どれも重要な知識だ。
しかし、それ以上に必要なものがある。
現場への関心である。
現場を知らずして、人は育てられない。
どんな仕事をしているのか。
何に困っているのか。
どんな未来を目指しているのか。
そこを理解しようとする姿勢がなければ、教育は机上の空論になってしまう。
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私は教育担当者を「サービス提供者」と考えたことはない。
現場から依頼された研修を実施するだけなら、それはサービス業である。
しかし、人材育成はそれだけではない。
現場自身も気付いていない課題を見つける。
将来必要になる能力を先回りして考える。
組織の変化を見据えて、新しい学びを提案する。
教育担当者には、そんな役割もある。
言い換えれば、
教育担当者は、組織の未来を設計する仕事なのである。
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2014年に取材を受けた頃、私はよく「教育部門は社内のコンサルタントである」と話していた。
研修を売るのではない。
課題を一緒に考える。
解決策を一緒に設計する。
そして成果を一緒に確認する。
その繰り返しだった。
だから現場との信頼関係が何より大切だった。
教育担当者は、教える人ではない。
伴走する人なのである。
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2026年の今、人材育成を取り巻く環境はさらに大きく変わっている。
生成AIが学習を支援し、個別最適化された教育も現実になりつつある。
これから教材を作る仕事は減っていくだろう。
事務作業も効率化されるだろう。
では、教育担当者の役割は小さくなるのだろうか。
私は、むしろ逆だと思っている。
AIができることが増えるほど、人にしかできない仕事の価値は高まる。
現場の声を聞くこと。
人の可能性を信じること。
組織の未来を描くこと。
学び続ける文化をつくること。
それはAIにはできない。
だから教育担当者という仕事は、これからますます重要になると私は考えている。
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30年以上この仕事に携わってきて、今、教育担当者とは何かと聞かれたら、私はこう答える。
教育担当者とは、人を育てる人ではない。
人が育つ環境をつくり続ける人である。
研修は、そのための手段の一つにすぎない。
だから私は今でも、教育担当者という仕事に大きな誇りを持っている。
人の成長に関われる仕事は、決して多くはない。
その仕事を選び、続けてこられたことを、私は幸せだったと思っている。
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次章予告
第7章では、この連載の中でも最も誤解されやすく、そして私が最も大切にしてきた考え方についてお話しします。
タイトルは、
「OJTが回れば研修はいらない」の真意。
この言葉の本当の意味を、30年以上の実践を振り返りながらお伝えします。
人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
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