中世暗黒時代:文明論的世界史の視点から

2018.07.10

開発秘話

中世暗黒時代:文明論的世界史の視点から

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ヨーロッパ中世は、中央アジアの騎馬遊牧民の西進によってゲルマン人が西ローマ帝国に入り込み、帝国が放棄され、代わって教会が抑圧的神聖管理をしたことによってできた。しかし、9世紀になると、ゲルマン人の残り、北方に逃げたノルマン人がヴァイキングとして来襲。これらを十字軍として東方に追い払おうとしたが、かえって東方貿易で力を付け、ヨーロッパの主権を奪われることになる。/

ヨーロッパ中世の成立

紀元前3500年頃、メソポタミア、つまり中東で文明が始まった。もちろん、それまでにも都市はあったのだが、それぞれ、せいぜい人が歩いて行ける範囲に限定されていた。これを変化させたのは車輪の発明だ。それまでも馬に鋤を引かせて耕作していたが、車輪によって荷車が作られ、これを馬に引かせることで、物資交流の範囲、そして中心都市の支配領域が飛躍的に拡大した。その後の数千年、黄河文明も、ローマ文明も、この古代の馬車時代から出るものではなかった。

一方、北方中央アジアの大草原では、紀元前千年頃から、遊牧民が直接に馬に乗る技術を獲得した。これは、つまり人間が馬の全力疾走と同じ速さ、およそ時速60キロで移動できるようになったことを意味する。おりしも、トルコのヒッタイトが原因不明の大災厄で崩壊し、彼ら独自の鉄器技術が周辺諸国にも伝播。遊牧民は鉄で鞍やハミやアブミ、蹄鉄などの馬具を工夫し、さらには騎乗弓射という驚異的な戦闘までも可能にしていった。

遊牧民たちは、乗馬の行動力と戦闘力によって勢力を拡大。四世紀には、そのひとつ「フン族」が西のヨーロッパ北部を襲撃する。現ポーランド周辺にいたゲルマン人の多くが 375年、ローマ帝国へ南下避難。もともと分割統治で混乱していたローマ帝国の西半は、この大量の亡命移民とその攻撃によって衰退し、五世紀末には消滅してしまう。やむなく、代わってキリスト教のローマ普遍(カトリック)教会が、宗教組織ながら行政機関を兼ね、ローマ教皇を中心に「ヒエラルキア(神聖管理)」を行うことになる。


中世暗黒時代

カトリックは、強固な原罪説、すなわち、人間が知恵の実を食べ、独善的な判断で神の定めた摂理を乱し、楽園を失なった、と考えており、救世主イエス、および、その権威を継承する教皇に従って、人々は愚直、寛容、奉仕に努めるべきだ、としていた。このため、人々は教会の鐘の聞こえる街や村にのみ集住し、その外には山賊とオオカミと悪魔魔女の暗い森が拡がるばかり。教会の外に救い無し、とされ、教会に逆らって街や村を追われれば、実際、森の中の死しか残されていなかった。

文明は、ローマ時代よりも、はるかに後退した。建物なども、ローマのアーチやドームの技術は失われ、石積みに木造の小屋掛けがせいぜい。ところが、農業だけは奇妙な発展を遂げた。ゲルマン人は以前、パサパサした大麦の粥を主食としていたが、旧ローマ領内にはローマ人の小麦畑が残されており、グルテンの多い小麦で作ったパン食へシフト。大麦はブタの餌となった。耕作に馬と車輪付きの鋤を使い、春蒔き大麦畑、秋蒔き小麦畑、そして休耕地を交代させる三圃制で地味を維持、さらに、ブタを大麦や森のどんぐりで肥育。かくして、食糧事情は劇的に向上、人口も増え続けた。

しかし、彼らとは反対に北上避難したゲルマン人、いわゆるノルマン人は、平坦な耕作地のほとんど無い峻厳なスカンジナビア半島にあって、現ポーランド周辺にいたころよりも貧しい生活を強いられていた。海を生かして漁労や交易に従事したが、かつては同類だった集住ゲルマン人から足もとを見られ、不当な扱いを受けることも少なくなく、さらに8世紀頃になると、ゲルマン人は、教会と手を組み、異教徒征伐と称して、ノルマン人の港を侵略してくるようになった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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