十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

2018.02.17

開発秘話

十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/十八世紀、メイソンリーという新たな国際ネットワークの中で、新旧両教の対立は大きく構図を変え、北米、南米、エジプトへの近代十字軍の構想とともに、えたいの知れない山師たちが各地で暗躍するようになる。/

「おまけに、カトリックには新大陸の経済開発のプロ集団がいた。イエズス会だよ。ほら、一七〇〇年から十三年にかけてのスペイン継承戦争で、フランス・ブルボン家がスペインを取っただろ。それで、スペインが世話していたイエズス会もブルボン家が面倒をみないといけなくなってしまっていたんだ。これ、実質的には、大ブリテンの東インド会社と同様の国際貿易商社で、ペルシアや中国、カリブ海の物産の輸入販売によってかなり儲かる組織だったんだが、頑迷な典礼問題で、ペルシアや中国からは追い出され、カリブ海の黒人奴隷による砂糖製造は使い込みで破産してしまった。おまけに、ポルトガルも、スペインやフランスを嫌って、イエズス会を国外追放にした。それで、会士二万四千人が行き場を失っていた。それで、ブルボン家は、ドイツ失領貴族やジャコバイト残党、イエズス会引き揚げ者、等々、みんな例のルイ十五世のスクレ・ドゥ・ロワ(王の密偵)に放り込んで、新大陸に自分たちの国を作らせようとした。連中は、そこで商品作物のタバコの大規模プランテーションを計画した」「つまり、厳格戒律会というのは、チューリンゲンから新大陸タバコプランテーションへの大移民団計画なんですね」

「すでに領地も国民も産業も当てがあって、きちんとカトリック・ジャコバイトの王までいるんだから、あとは、資金だけか」「でも、チューリンゲンの小国の名士たちなんて、たいしたおカネは持っていなかったんじゃないんですか」「そうだな、カネのことなら中世以来の金融自由都市フランクフルトだろ」「ぬかりはないよ。郵便諜報のタクシス侯家が四八年にレーゲンスブルク市に引っ込められて以来、ずっと空白になっていたフランクフルト市に、五七年、「黄金薔薇十字団(ゴルト・ウント・ローゼンクロイツ)」なんていうができる」「薔薇十字団だったら、大ブリテン系ですよね」「ところが、これはザムエル・リヒター、筆名シンケルス・レナトゥスの思想に基づくものでね」「それ、誰ですか?」「シレジア貴族の家庭教師で、錬金術師だよ。賢者の石を作った、アウルム・ポタビレを作った、ってさ」

「アウルム・ポタビレって、飲める黄金か?」「いかにもインチキくさいだろ。でも、錬金術でも霊媒術でもいろいろやって、おまけにこのゴールドドリンクでかなりの人気になったらしいよ。おそらく、これも実体はイエズス会だろう」「イエズス会がゴールドドリンクを作ってたなら、そりゃきっと、いまのエナジードリンクそのものじゃないのか。連中なら、ハチミツに砂糖、ガラナ、マカ、高麗人参、モンティチェッリ・ニンニク、ラム酒、抽出カフェインなんかも、かんたんに調達できただろうから」「集会でそんなの飲ませたら、みんなハイになっちゃって、幽霊でもなんでも見えたでしょうね」「ヨーロッパのやつらは、やたらアルコール耐性はあっても、カフェイン耐性はまったく無いからな」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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