十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

2018.02.17

開発秘話

十八世紀ヨーロッパの山師たちを巡る対話:フリーメイソンと外交革命

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/十八世紀、メイソンリーという新たな国際ネットワークの中で、新旧両教の対立は大きく構図を変え、北米、南米、エジプトへの近代十字軍の構想とともに、えたいの知れない山師たちが各地で暗躍するようになる。/

「新大陸の財宝って、インディアンの?」「インディアンはインディアンだが、本命は南米なんだ。エルドラド市、黄金郷だよ」「そんなの、伝説だろ?」「でも、当時の地図には、しっかり場所まで描かれていた」「どういうことですか?」「フランスは、一六〇四年からブラジルの北岸に探検植民地を持っている。いまの仏領ギアナ」「映画でパピヨンが入れられてしまった牢獄の悪魔島のあるところですね」「悪魔島なんていう名前も、エルドラド市に外国人を近づけないための脅しかもな」「近づけないって言っても、どこにあるか、わかないんでしょ?」「いや、このあたり、イエズス会が布教名目で入り込み、原住民から多くの情報を収集していた」「そのイエズス会に代わって、かつての聖堂騎士団と救院騎士団が南米に勢力を拡大しようというわけか」「イエズス会の話だと、仏領ギアナの内陸高地に巨大なパリメ湖というのがあって、その湖畔にエルドラド市がある、とされていた」「パリメ湖?」「位置からすれば、今のボアビスタ市の周辺なんだが、そんなところに湖は無い。湖が無いから、湖畔のエルドラド市も見つからない」「じゃ、まるっきりのデマ?」「そうでもないんだ。十三世紀くらいまではパリメ湖はたしかにあった。ただ、その後の数百年で干上がってしまった。それで、どこが湖畔だか、わからない」「干上がっていった湖の湖畔なんて、その全部と同じことだろ」「そんなもの、探しに行こうとしていたんですか……」

「ただ、その前に、問題が生じた」「合併相手の、フント男爵のカトリック・ジャコバイトの厳格戒律会聖堂騎士団の方か?」「いや、それは、もはやドイツでは国家以上の圧倒的な独占勢力になっていた。けれども、その代償として、一七七二年のコーロ市でのメイソン大会で、五十歳のフント男爵は、プロシア「大王」フリードリッヒ二世の義弟、三七歳のブラウンシュヴァイク侯フェルディナントに「第七管区総帥」の地位を譲らなければならなかった」「フランス側のレザミ・レユニのトップが大物官僚の王室財宝官なのに、ドイツ側のトップが没落貴族の男爵じゃ、かっこうがつかないもんなぁ」「でも、大王の義弟となると、新聖堂騎士団もザクセン選帝公国主導からプロシア選帝王国主導になったということですか?」「そういうことだな」

「あれ? プロシアは、七年戦争以来、ハノーファー・大ブリテンと同盟関係ですよね。でも、新十字軍は、フランスとともに新大陸にカトリック・ジャコバイトの新王国を建てる気だったんでしょ?」「新大陸の方も状況が変わったんだ。大ブリテンにもっとも強く反発したのは、東岸北部の清教徒のマサチューセッツ州だった」「だって、アパラチア山脈以西の権益なんて、アパラチア山脈より北のマサチューセッツ州には関係ないもんな。そんなものを守るための軍事維持費を負担させられたんじゃ、怒るのも当然だ」「それで一七七三年末のボストン茶会事件が起きるんですよね」「でも、マサチューセッツ州の清教徒って、潔癖主義で宗教的寛容性もなにもあったもんじゃない。それで、むしろカトリック・ジャコバイトの新王国を計画していた東岸中部の方が、大ブリテンとともに独立運動を鎮圧する側に回ってしまったんだよ」

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。