フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

2018.01.28

開発秘話

フリーメイソンの成立事情を巡る対話:レン・ニュートン・ラムゼー

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/フリーメイソン(自営石工)のブルーロッジは、中世、さらには古代にまで遡る。だが、近代になって、各地のロッジを統括し、政治利用しようとするゼネコン連中や投資家連中が、その上にレッドロッジ(グランドロッジ)を作り、その支配権の争奪を始める。/

「ただ、みんなが儲け話に浮かれていると、荒唐無稽な事業を名目に人々からカネを巻き上げて逃げるだけの「プロジェクター」と呼ばれる山師連中も湧き出てきた」「そりゃそうでしょう」「それで、ロッジは、しだいに厳格な会員制になって、信用のおける仲間しか入れないようになる」「会合の時間や場所も秘密というわけですね」「とくに、この時代、変なやつと関わって、ジャコバイトの一味だ、なんて言われたら、もう社会的に抹殺されてしまう」「結局のところ、ジャコバイトって、ほんとうにいたんですか?」「薔薇十字友愛団と同じような妄想かもね。それでも、ジェイムズ二世が亡くなった一七〇一年には「王位継承法」を立てて、その係累の王位継承権を正式に否定している」「議会の方も、よほど後ろめたかったんでしょうね」

「でも、「ジャコバイト」叩きでのしあがったホイッグ党の天下も、長くは続かない。ネーデルラントから呼んできたウィリアム三世が一七〇二年に亡くなり、妻の妹、つまりジェームズ二世の次女アンが継いだが、これが国教徒。それでトーリイ党が政権を奪還。しかし、あいかわらず議会ではホィッグ党も強く、ひどく不安定な政治に」「国王制と議会制と、まだ折り合いがよくわかっていない時期でしたからね。でも、トーリイ党政権になって、王認協会も安心でしょう」「ところが、創設以来、協会の中心となってきた事務長のロバート・フックも、〇三年に、六七歳で亡くなってしまったんだよね」「じゃぁ……」「そう、いよいよニュートン六一歳の独裁。みずから会長になり、ラィヴァルのグリニッジ天文台のフラムスティードも蹴落とし、百人そこそこの協会を、自分の子分たちと、一般の名望家たちで埋め尽くしていく」「やっぱりロンドンの王認協会なんて、ベルリンの国王アカデミーと違って、科学とさえ関係なさそうだ」

「一七〇七年五月、イングランドが実質的にスコットランドを吸収して、大ブリテン王国となり、スコットランドに残るジャコバイトの芽を叩き潰した。このころ、大ブリテン王国は、フランスのルイ十四世と、スペイン継承戦争で争っていた。しかし、その年の夏、フランス南東岸のトゥーロン包囲戦に失敗、おまけにその帰途、霧の中、艦隊がブリテン島南西沿岸で座礁し、四隻、千五五十名も失う大惨事となってしまった。ここでまた出て来るのが、王認協会のニュートン六五歳。議会から経度委員会を任され、国家事業として海上での座標確認方法を探求し始める」「ニュートンって、そんなに愛国心があったんですかね?」「違うよ。経度委員会には、時計から測量器まで、とにかくありとあらゆる新発明のアイディアが独占的に集められたんだ。人よりそれを先に知っていれば、投資で大儲けできる」「かつて、王認協会事務長フックのところに世界中の最新情報が集まってきているのを、ニュートンはきっととってもうらやましく思っていたんでしょ。出来の悪い子分や、ぶらさがるだけ名望家ばかりになってしまった王認協会では、もうロクな話なんか集まらなかったでしょうから」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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