求められる仮説検証(9)仮説検証を組織能力として根付かせるために

2026.02.11

経営・マネジメント

求められる仮説検証(9)仮説検証を組織能力として根付かせるために

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「求められる仮説検証」シリーズの締めくくりとして、仮説検証を個人のスキルに留めず、組織全体の「文化」や「能力」へと昇華させるための要諦を整理した。

これまで本連載では、戦略仮説の種類から検証の効能、そして検証を阻む壁について論じてきた。最終回となる本稿では、仮説検証を一部の優秀なリーダーの「特殊技能」に終わらせず、組織全体が持つコア・コンピテンシーたる「組織能力」として定着させるための道筋を提示したい。

1. 「個人の知」から「組織の型」への転換

仮説検証が組織に根付かない最大の理由は、それが「属人的なセンス」に委ねられている点にある。特定の人間だけが「なんとなく筋の良い仮説」を立て、検証もせず実行し、結果オーライで済ませているうちは、組織としての学習は進まない。

組織能力化への第一歩は、検証のプロセスを「標準化された型(メソッド)」に落とし込むことである。

  • 定義の統一: 「事実」「仮説」「検証方法」「判定基準」という言葉の定義を揃える。
  • フォーマットの導入: 意思決定の際、「どのような仮説に基づき、何を確認すればその仮説が正しい(あるいは誤り)と言えるのか」を明記したドキュメントを必須とする。

これにより、検証の精度が個人の資質に左右されにくくなり、後任者への知見の引き継ぎも容易になる。

2. 「失敗」の定義を書き換える

心理的安全性が確保されていない組織では仮説検証は機能しない。なぜなら、検証とは本質的に「自分の考えが間違っている可能性」に光を当てる作業だからである。

多くの組織において、立案した仮説が外れることは「失敗」とみなされる。しかし仮説検証における真の失敗とは、「仮説が外れること」ではなく、「仮説を検証せずに放置し学習の機会を逸すること」である。

組織能力として根付かせるためには、経営陣自らが以下の姿勢を示す必要がある。

  • 「早く安く間違えること」を称賛する: 莫大な投資をする前に、小さな実験で仮説の誤りに気づいた担当者を評価する。
  • 「検証による撤退」を英断とする: 埋没費用(サンクコスト)に囚われず、検証結果に基づいてプロジェクトを中止したリーダーを「賢明な判断者」として評価し、適切に遇する。

3. 「ダブルループ学習」の仕組みを組み込む

単に「計画通りにいったか」をチェックするのはシングルループ学習である。組織能力としての仮説検証は、さらに踏み込んで「なぜその仮説を立てたのか、前提となる認識に誤りはなかったか」を問い直すダブルループ学習を要求する。

具体的には、事後検証の場において以下のサイクルを回す。

この「前提の修正」こそが組織知であり、次なる戦略仮説の精度を高める源泉となる。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け39年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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