仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第4弾。「戦略仮説の検証」が必要な具体的理由を述べたい。
3つ前の記事にて「戦略仮説とは」を語り、前々回と前回の記事では「戦略仮説の検証とはどんな事をするのか」を例に基づいて語った。今回は「ではなぜ戦略仮説を検証する必要があるのか」というテーマに踏み込みたい。
経営の教科書ではこれは当然の前提とされるためか解説されることはあまりないが、戦略仮説を検証する理由あるいは効能は、大きく2つにまとめられる。
1. 戦略仮説の信頼性を高める
第一の効能は、戦略仮説の信頼性を高めることだ。戦略仮説が未検証で「生煮え」のままだと、「この戦略は本当に信頼できるのか?」という疑念が生じる。それが、実行段階で必要な協力を得られないという大きな障害につながることがある。
この疑念や抵抗は、プロジェクトが進行し、終盤に差し掛かるほど強まる傾向がある。たとえば、新カテゴリーの製品を開発し市場投入する場合、初期の企画段階では「よく分からないが」という確信度でも試行錯誤が許される。
しかし、市場投入が目前になった段階で「実は市場調査を十分にしていなかった」となると、経営者や販売部門は不安を抱き、投入のGOサインを出さなくなる。
だからこそ、事前にきちんと検証しておくことで仮説の精度に対する信頼性が高まり、関係者も安心して協力してくれる環境が整う。
ただここで留意しておくべきなのは、「課題仮説」と「打ち手仮説」のどちらが未検証かによって、関係者の反応が異なることだ。
- 課題仮説が未検証でも、打ち手仮説が検証済かつ好結果が出ていれば、「まあ結果が出ているなら」と納得して協力してもらえるケースが多い。
- 逆に、課題仮説が検証済でも、打ち手仮説が未検証だと、「これ本当にうまくいくの?」という不安が募り、最悪の場合、市場投入がストップすることもある。
もちろん、だからといって課題仮説の検証を怠っていいわけではない(後述の第二の効能を考えれば得していただけるだろう)。どちらもきちんと検証しておくことで、戦略仮説そのものに対しての信頼性はもちろん、戦略策定者に対する信頼性も高めることができ、実行に向けての協力を得やすくなる。
2. 仮説が間違っている場合の被害を最小限に食い止める
もう一つの効能は、仮説が誤っている場合でも、それに早期に気づき被害を最小限に抑えることができる点だ。ここでは、「課題仮説」と「打ち手仮説」それぞれの場合に分けて考えてみたい。
(1)課題仮説が誤っている場合
課題仮説とは、「解決したい事態=課題の構造はこうなっているのではないか」という要因構造の仮説のことだ。つまり、単に「こういう問題がある」という表層的な話ではなく、問題の本質や要因、それらの構造をどう捉えるか、という部分が問われる。
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
