求められる仮説検証(5)戦略仮説の検証が求められる場面

2025.08.18

経営・マネジメント

求められる仮説検証(5)戦略仮説の検証が求められる場面

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第5弾。「戦略仮説の検証」がどういう状況やプロセスにおいて求められるのかについて述べたい。

前回の記事では「なぜ戦略仮説を検証する必要があるのか」について語った。今回は「戦略仮説を検証する必要があるのはどういう場面か」というテーマについて考えてみたい。

そもそも誰が「戦略仮説をちゃんと検証したのか?」と言い出すのか。これは前回の「なぜ戦略仮説を検証する必要があるのか」から考えれば明白だ。

大きく分けて2つあり、一つは戦略推進に協力する側だ。すなわち「(提示された)戦略仮説の信頼性がどの程度あるのか」を確かめ、「本当にその仮説に基づいて協力する価値があるのか、無駄な仕事に付き合わされて馬鹿を見ることがないのか」をチェックしたいという発想だ。

この場合は前回の記事でもお伝えした通り、仮に課題仮説が未検証でも、戦略の打ち手仮説が検証済かつ好結果が出ていれば、「まぁ結果が出ているなら」と納得して協力してもらえるケースが圧倒的に多い。つまり打ち手仮説が出てから以降のプロセスにおける検証が重要となる。

もう一つは戦略推進側、すなわち戦略策定した当人のチームもしくはその上司だ。「仮説が間違っている場合の被害を最小限に食い止める」ために、抜け漏れなくちゃんと考えておかないといけないという責任感からの発想だ(上司からすると「部下の間違いの責任を取らされてはかなわない」というリスク回避の気持ちもあるかも知れない)。

この場合、戦略策定のプロセス全般にわたっての検証が求められる。なぜなら打ち手仮説に対する検証が済んでおり、かつ好結果が出ていて一見万事うまくいきそうに見えていても、実は課題仮説が間違っていて打ち手を考える方向や領域が違っていれば、機会損失が生じるかも知れないし、全部が壮大な無駄打ちになりかねないからだ。

この辺りは前回の記事でもケース分けしてお伝えしたが、簡単な状況例で再度考えてみたい。

例えば既存技術を応用して新事業の開発をする場合を考えてみよう。幾つもの可能性が有り得るが、課題仮説として「自社の技術の特性」(特に顧客目線でどういう価値を感じられるのか)を広く正しく捉えることに失敗してしまえば、それを応用することで『満たされていないニーズがある』はずの市場領域を必要以上に狭く特定してしまうことになるかも知れない。そうなれば結果的に、あまりポテンシャルの大きくない市場をターゲットとしてしまうことになる。

そうなれば打ち手仮説がどれほど優れていても、本来狙うべき事業の規模には到底近づけないようなビジネスモデルと市場開拓方法を一生懸命に考えることに、関係者の努力を集中させてしまうかも知れない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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