本社がいらない:プッシュ・マーケティングの終わり

2026.05.13

営業・マーケティング

本社がいらない:プッシュ・マーケティングの終わり

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/総量一定こそ、マーケティングの大原則。食糧消費、時間消費の総量は、短期的には変わらない。その中で勝ち残り、生き残るのは、もっともコスパ、タイパの良いもの。それには、企業にとっても、消費者にとっても、費用対効果の合わないムダな営業、宣伝、開発を、まず削ぎ落とす必要がある。/

 AIがどうこう以前に、本社のホワイトカラーのほとんど全員が、いらないんじゃないか? 

 まず営業。これまで、おまえらの作った商品を、オレさまが頭を下げて売ってきてやった、とばかりに、社内ででかい顔をしてきたが、現場の製造が人員も素材も限界になっている以上、文字どおり、やたらかってな安請け合いは、現場にとって迷惑千万。そんなことをしなくても、買ってくれるところは買ってくれるし、それどころか、買わせてください、譲ってください、作ってください、と、いま、顧客側が、あちこちのメーカーを走り回っている。そこに現場シロウトの余計な営業マンにイッチョカミされても、話が遠くなるばかり。仕様の変更だの、納期の可能性だの、モノ作りをわかっている同士が直接交渉した方が、はるかに、いまの事態に対応しやすい。

 それに、デザインだの、広告宣伝だの。とっくの昔に製造現場のコストダウンは限界に達している。なのに、競争力だ、訴求力だ、などと、愚にもつかないカタカナのマーケ英語を振り回して社内をケムに巻き、わけのわからない領収書で予算をデタラメに使いまくってきた。しかし、頭を冷やせば、それって、まったく費用対効果が合っていない。現にテレビCMを減らしたって、売り上げは落ちないし、むしろ地味なパッケージの定番プライベート商品の方が、数が掃けている。それどころか、やたらCMを打っていた有名企業の方が、もはやあちこち身売りされている。

 まして、新商品開発。そんなの、だれが求めている? そりゃたしかにちょっと話題になって売れるかもしれないが、莫大な試行錯誤の手間と費用さえ、ペイしない。むしろ廃れるのが早くて、現場を混乱させ、ムダな手間を増やしているだけ。

 営業、宣伝、開発。予算が莫大なだけでなく、こういうのがどれだけ人件費、マンパワーを喰い潰していることか。そればかりか、定常的な現場を振り回して、現場がぎりぎりまで切り詰めたはずの全体の経営コストを押し上げてしまっている。

 重要なのは、基幹主力商品だ。製造能力が落ちてきている以上、確実に安定して稼げる本業に、予算もマンパワーも集中するのが、当然の経営戦略。そして、そのためにも、あってもなくてもいいような余剰部門は、いち早く切り捨てるのが当然。

 いままでの日本が異常だった。街並みも、商品棚も、戦後の日本は、まるで風俗街のようだった。いや、日本だって、古い街並み、上品な店先は、こんなけたたましい色使い、品揃えなんかしていなかった。それが、高度経済成長期の末から、パッケージのフルカラー四色印刷、アルミに白地敷きの五色印刷、さらには蛍光特色、変形パッケージまで入れて、とにかく、目立て、目立て、目立てば勝ちよ、とばかり、三流芸人のラメジャケットのような商品だらけになった。町も、かつてはせいぜいしょぼい蛍光灯かネオンくらいだったのが、下品なラブホかパチンコ屋のようにちかちかと電球で飾り立て、ライトアップだらけになり、絵柄までまばゆく変わるメガスクリーンが、交差点前のビルの壁面を埋め尽くした。結果、結局、どれもこれもが度派手なだけで、かえってどれも目に止らなくなった。だから、いっそ、無地に一色、文字だけ、の方が、おや、っと、目を引くようになった。

 生活もコストダウンだ。富裕層はともかく、一般庶民は、べつにこれ以上の画期的な新製品なんか必要としていない。ふつうの調味料、ふつうのチョコレート、ふつうの車。ごほうびだのなんだの言うが、あれは外食などの贅沢からの撤退転換。総量一定こそ、マーケティングの大原則。食糧消費、時間消費の総量は、短期的には変わらない。その中で勝ち残り、生き残るのは、もっともコスパ、タイパの良いもの。それには、企業にとっても、消費者にとっても、費用対効果の合わないムダな営業、宣伝、開発を、まず削ぎ落とす必要がある。

純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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