求められる仮説検証(6)事前検証と事後検証は車の両輪

2025.09.24

経営・マネジメント

求められる仮説検証(6)事前検証と事後検証は車の両輪

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第6弾。これまであまり強調してこなかった「事後検証」について述べたい。

これまでこの「求められる仮説検証」シリーズでは、戦略仮説に対する「事前検証」を中心に論じてきた。新しい戦略や解決策を立案した際、その妥当性をあらかじめ点検し、実行前に必要に応じて手直ししておくことの重要性を、繰り返し強調したかったからである。

従来の日本企業の戦略策定や戦略的プロジェクトの推進では、「事前検証」を軽視し、いきなり実行に移す傾向が強かった。その結果、効果が出ない施策が走り出してしまったり、現場で修正不能のまま頓挫したりする例が少なくなかった。

この反省から、本シリーズの前半ではあえて「事前検証」に焦点を当て、戦略立案段階での仮説点検の必要性を掘り下げてきたのである。

事後検証の重要性】

しかしここで注意しておきたいのは、戦略仮説の検証は「事前検証」だけではないという点だ。むしろ、それに劣らず重要なのが「事後検証」である。

戦略の成否を確かめ、次の改善につなげるためには「事後検証」が不可欠だ。事後検証をしないままでは、組織はいつまでも同じような失敗を繰り返し続ける恐れが高い。にもかかわらず、多くの企業では実行後すぐのタイミングで検証をせず、数年後になってから「そういえばあの戦略は失敗だった」と総括するケースが目立つようである。

これでは、関係者の記憶は薄れ、判断の経緯も不明瞭になり、場合によってはキーパーソンがすでに社内にいないという事態すら起こり得る。なぜその戦略や解決策が選ばれ、どのような実行上の不備があったのかを、正確に把握できなくなってしまうのだ。


【日本企業にありがちな問題点】

筆者が相談を受けた企業の中にも、まさにこうした「遅すぎる事後検証」の典型が存在する。

ある大企業では、数百億円規模の新規事業が軌道に乗らず、ようやく撤退を決めたのは開始から5年後だった。振り返りの会議が開かれたものの、担当役員はすでに引退し、当時の現場リーダーも大半が退職済み。「なぜその市場に参入したのか」「当初の計画のどの点が甘かったのか」といった肝心な問いに答えられる人が誰もいない、という事態に陥っていた。これでは検証というより、単なる「慰霊祭」である。


【望ましい実践のあり方】

では、どうすればよいのか。鍵は「事後検証を事前に設計する」ことにある。戦略や解決策を実行する前に、あらかじめ「どの時点で、どのような方法で検証するか」を決めておくのだ。例えば以下のような方法が考えられる。

1.KPIレビュー

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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