求められる仮説検証(3)戦略仮説の検証とはどういうものか(その2)

2025.05.15

経営・マネジメント

求められる仮説検証(3)戦略仮説の検証とはどういうものか(その2)

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第3弾。前回に引き続き、「戦略仮説の検証」とはどういうことを行うものなのかを具体例を使って紹介したい。

2.課題仮説の構築

不安になったCの経営者から相談を受けた小生はその段階で対策プロジェクトに加わったのだが、当初はまともな情報がほとんどないことに閉口した。

Cの営業部門も完全に受け身体質で、企業Xの調達部門からの発注を待つだけだった。そのため、自社の製品(OEMだったのでブランドは企業Xのものだったが)が全国のどの地域でどれだけ売れているかすら把握されていなかった。

したがって、この急激な落ち込みが表面化した段階でも、どの地域でどれほどの急ブレーキが掛かっているのか、ましてや各地域での落ち込み度合いを左右する要因も、さっぱり分からない状態だったのだ。

「分からない」ばかり言っていても始まらないので、まずは事実をなるべく多く集めようということで、プロジェクトチーム(PT)としては全国の営業組織(主にビジネス向けの通信機器の販売を担当していた)にお願いして、企業Xの全国の支店・営業所を回ってもらい、C社製品の実際の販売数の推移をヒアリングするところから始めた。

すると明らかに地域的な偏りが大きいことが判明した。しかも元々販売数が大きい、すなわち人口の多い地域ほど落ち込みの割合も大きいことが分かってきた。これは経営的に由々しき問題であると同時に、小生にはある仮説が浮かんだ。すなわち「家電量販店が増えている地域ほど落ち込みが激しい」のではないか、と。

それはつまり、ユーザーである消費者は、企業Xの営業窓口で汎用品を注文しなくなった代わりに、量販店でメーカー独自の製品を品定めしながら購入するように消費行動が急激に変わってきているのだ、という話だ。

もしその仮説が正しいなら、家電量販店の進出が今後も見込まれる幹線道のロードサイド周辺などの地域、そして大型家電量販店が既に乱立していた首都圏や大阪などの都心部はさらなる落ち込みが相当程度に予想されるということになる。

3.課題仮説の検証

そこでPTではまず、その課題構造の仮説が本当に正しいのかを全力を挙げて検証することとした。

企業Xの営業窓口の所在地と、その最寄り地に家電量販店があれば各地の地図上で紐づけし、その営業窓口を統括している地域の支店からの発注量の落ち込みが家電量販店の出店時点から大きくなっていないかを、全国の主要都市で片っ端から調べ上げた。

結果は恐ろしいほどに一致していた。課題仮説は正しいことが検証されたのだ。

4.打ち手仮説の構築

そこからは課題を「(今後、こうした消費行動が広がり定着していく中で)どう対処すればこの汎用品ビジネスは収益を維持・改善できるのか」というふうに置き換えて(※)、次はその課題を解決する仮説を構築する段だ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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