仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第3弾。前回に引き続き、「戦略仮説の検証」とはどういうことを行うものなのかを具体例を使って紹介したい。
各ファクターの係数を色々とブラッシュアップするのだが、モデルの有効性の数値はあるところから一向に上がらなくなってしまった。ある地域でかなり上がったと思ったら、他の地域に当てはめると却って下がってしまうといった一進一退を繰り返すようになり、2週間余りが過ぎてしまった。これには参った。
結論からすると、前提として考えていたモデルの構造が不正確だったのだ。我々にも思い込みがあって、量販店に買いに来る人たちの住所範囲をかなり限定して想定していたのだ。
詳細は省くが、「当たればラッキー」程度に考えて想定範囲を思い切って拡大してモデルを組み直したところ、各地域に適用した際の有効性数値が一挙に向上し、十分な実用性があると判断できるレベルに達した。
6.仮説検証後
そうした紆余曲折を経て、この件に関する「打ち手仮説」の構築とその検証は完了した。他の個々の「打ち手仮説」についても具体策の策定と検証を終え、全体の実地試行(一部地域でのトライアル)に移った。
比較的短期間であったが実地試行での検証でも特に問題なく、過剰在庫を生むことなく注文にスムーズに対応することができた。こうした結果を踏まえ、本番へのGOサインが出された。その後の全国での本番展開においても特に問題は生じず、この大きな仕組み転換は無事完了したのである。
以上、「既存事業の問題解決」パターンでの戦略仮説の検証事例をお伝えしたが、ピンと来ていただけただろうか。
日沖 博道(ひおき ひろみち):パスファインダーズ株式会社 代表取締役、経営戦略研究会「羅針盤倶楽部」コーディネーター&アドバイザー。
経営・事業戦略
2023.07.19
2024.02.21
2024.08.21
2025.01.09
2025.01.22
2025.03.05
2025.04.23
2025.05.15
2025.06.04
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
