“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

画像: 産経デジタル

2015.05.26

ライフ・ソーシャル

“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

選挙中は「ふるさとを奪うな」とかのネガティブキャンペーンが横行し、選挙直後は「老害が若者の未来を阻止」などといった感情的な書き込みがネットを行き交った。しかし冷静になって住民の肚を探れば、もっとずっと実際的な理由が浮かび上がる。

「今の仕組みの下でも、府と市が連携すれば2重行政は解消できる」というのが反対派の挙げる第一の理由だが、それがずっとできないままで来たから大阪は無駄づかいが多く、ここまで地盤沈下したのだ。

これは国鉄や電電公社が民営化を迫られた際に社内の多数派だった反対派が「国営のままでもよいサービスを提供することはできる」と強弁していたのとそっくりで、全く説得力はない。

また、二つ目の理由としては「特別区設置に伴う庁舎建設・システム改修などの初期コストが600億円以上掛かる」ということだが、毎年の経費削減が大きくて数年で元が取れるなら問題ない。

賛成派は毎年4,000億円の経費削減になるので初年度で軽く元が取れるといい、反対派は1億円しか経費削減にならないと主張していた。このギャップを埋めるべく、客観的・定量的な分析・検証が本当は必要だったはずだ。真実は多分、両者の極端な主張の中間にあると思われる。

反対派の主な理由の第三点は「特別区になると住民サービスが低下する」ということだが、要は大阪市から特別区になると権限も財源も低下するので、自動的に住民サービスが低下するということらしい。

http://blogos.com/article/111381/

この主張は一見、何となく頷けるところがあるのだが、「区だから権限・財源が小さくてサービス低下する」というのは論理的ではない。

区の対象となる地域範囲が狭くなり、住民数も少なくなるのだから、住民1人当たりの予算は本来大して変わらないはずだ。住民に近い行政単位である特別区が住民サービスをするようになることで、むしろ「きめ細やかなサービス提供が可能になる」という賛成派の主張のほうが筋が通っているように思える。

ちょっと視点を変えてみよう。東京府が昭和18年に特別区を抱える東京都になったことで区民に対する住民サービスは明らかに低下したのだろうか。今、東京都では区による住民サービスは都下にある主な市に比べ低レベルにあるのだろうか。いずれも小生にはそうは思えない。

つまり住民サービスを提供する主体が市であろうが、府の下にある特別区であろうが、大きな意味を持つ訳ではないと考えざるを得ない。結局、大阪市および大阪府がどれほど住民サービスに予算を投じようとするか、そしてその財源の当てがあるのか、この2点次第ということではないだろうか。前者は市長もしくは府知事の個々の政策方針と協調次第なので、やや賛成派に分があると思える。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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