“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

画像: 産経デジタル

2015.05.26

ライフ・ソーシャル

“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

選挙中は「ふるさとを奪うな」とかのネガティブキャンペーンが横行し、選挙直後は「老害が若者の未来を阻止」などといった感情的な書き込みがネットを行き交った。しかし冷静になって住民の肚を探れば、もっとずっと実際的な理由が浮かび上がる。

後者、すなわち財源の問題はいかがだろう。実はこれが最大のイシューではないだろうか。

大阪市がなくなって大阪府が直接財源を握ることで、大阪の中心市街区で発生する税金のかなりの部分が大阪市外に流れてしまうのではないか、という懸念が反対派には大きいのではないかと思える。つまり「ワシらの稼ぎから生まれた税金を他の地域の奴らに使われてたまるか」ということだ。

実際、東京都の中心街で発生する膨大な税金の多くが東京都下もしくは東京以外にも使われているから、これは「大阪都」にとっても現実的な問題だ。セコい発想ではあるが、大阪人らしく損得勘定でいえば「損やがな」といった判断になろう。直接の利害関係者を除けば、実は多くの反対派市民にとってはこの財源問題が一番の反対理由だったのではないか。

賛成派が提示する、二重行政の解消による大阪全体の発展のためという「あるべき行政構造=理想論」×「ちゃんとやったら=可能性」の主張に対し、反対派の利害関係者が耳のそばで囁いた「街の先行きのことは知らんけど、すぐに間違いなく起こるのは、ただでさえ足らん財源がさらに減ることやないか」という「勘定論×確実性」を比較して考えてみたら、後者に軍配を上げた、というのが今回の「大阪の陣」の結果だったのではないだろうか。

これだと世論調査の結果が、賛成有利から、やや反対派有利に移っていった理由も肚落ちする。当初は大阪の将来を観念的に考えて賛成の気分が強かった大阪市民の一定割合が、色々な情報に接しているうちに段々と、「他人にワシらの税金を使われてしまうのは我慢ならん」という感情的なところに収束してしまったのではないだろうか。

でもそんなレベルで市民の多数派が地域改革の議論に断を下してしまったのだとしたら、大阪の未来はそんなに明るくないのかも知れない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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