“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

画像: 産経デジタル

2015.05.26

ライフ・ソーシャル

“大阪都構想”住民投票を決着させたもの

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

選挙中は「ふるさとを奪うな」とかのネガティブキャンペーンが横行し、選挙直後は「老害が若者の未来を阻止」などといった感情的な書き込みがネットを行き交った。しかし冷静になって住民の肚を探れば、もっとずっと実際的な理由が浮かび上がる。

こうした議論の厄介な点は、議論の前堤になっているグラフおよび調査に関し、各年代の母数が分からないことを含め、本当に正しいデータに基づいているのかという信頼性に疑問が残ることだ。

このグラフ通りなら、70代以上の総投票数割合が全体の3~4割を占めない限り"大阪都構想"は賛成多数になったはずなので、小生はこれらの世代別分布グラフの元となる調査結果の信ぴょう性自体に疑問を持っている。

そして同時に首をかしげている。一つには、今回の社会的ディベートは非常に非対称的だったためだ。

"大阪都構想"賛成派は、今後の大阪地域の再生のための一つのビジョンとして具体的な改革構想を提示しているのに対し、反対派はNoとしか言わず、大阪再生の代替案を示していない。「"大阪都構想"には反対だけど、もっといい手がある。それは…」というように対案を示すことができて、はじめて政治論争の場に登場する資格があるはずだ。それなしでただ単に反対するだけでは「大阪は今のままでいいんだ」と言っているようなものだ。

本当に今のままでいいのだろうか。バブル崩壊以降の大阪経済の地盤沈下と不振振りを見聞きする限り、決してそうは思えない。

個人的には、維新の会が掲げる新保守主義的な政策には全く賛成しかねるもの(特にカジノ法案)も含まれるが、少なくとも大阪都構想に関しては「大阪を何とかよくしたい」という思いが伝わってくる。

それに対し、反対派の地元政治家たちは「ふるさとがなくなってしまう」などといった情緒的なネガティブキャンペーンに血道を上げ、極めて非建設的な振る舞いに終始していた。維新の会をこれ以上調子づかせては敵わないという極めて政局的発想に基づいてか、自民党と共産党が反対集会で共闘するという異常事態まで生まれていた。

反対派の逆襲を盛り上げたのは、自分たちの肩書が府議会議員から区議会議員に格下げになってしまう(また、下手をすると落選するかも知れない)議員および政党関係者だけではない。クビになるかも知れない大阪市役所職員や、組合関係者といった人達は直接の利害関係者であり、当然ながら躍起になって反対運動を展開していたようだ。でもそれらの事情は大多数の大阪市民にとっては関係ない。

では「反対」に票を投じた市民はどんな理由に基づいたのだろう。利害関係者がチラシやHPで訴える反対の論拠はどうも根拠薄弱なのだが、そのどこが市民の多数派を肯かせたのだろう。この疑問が小生の首を傾げさせるのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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