私は長年、さまざまな企業の組織創りや人材育成に関わってきた。経営者、管理職、若手社員、それぞれの立場にいる人たちと向き合いながら、チームがうまくいく理由とうまくいかない理由を見続けてきた。 その経験の中で、近年とくに強く感じていることがある。 それは、真の意味での組織創りが、以前より難しくなっているのではないかということである。
だから私は、人々が成長を忘れたというよりも、むしろ私たちの社会や企業が、「成長」という言葉の意味そのものを狭く、貧しいものにしてきたのではないかと感じている。
本来の成長とは、もっと広いものではないだろうか。
本当の成長とは何か
仕事を覚えることも成長である。できなかったことができるようになることも、知識を増やすことも、専門性を高めることも大切である。
しかし、人間にはもう一つの成長がある。
以前なら感情的になっていた場面で、一度立ち止まって考えられるようになる。自分と違う意見を、すぐに否定せず聞けるようになる。自分の非を認められるようになる。失敗したとき、誰かのせいにするのではなく、自分にできたことを考えられるようになる。
また、自分の仕事だけでなく周囲を見るようになり、困っている仲間に気づき、後輩の成長を喜び、自分の損得だけではなくチーム全体のことを考えられるようになる。目の前のことだけではなく、その先の未来や社会にまで視野が広がっていく。
私は、こうした変化を人としての成長、成熟と呼びたい。
そして、真の組織創りを考えるとき、実はこの成熟が極めて重要になる。
組織とは、成熟度の異なる人間がともに働く場所である
組織で起きる問題の多くは、専門能力だけでは説明できない。
会議で自分の意見に固執する人もいれば、異なる意見から学べる人もいる。失敗を隠す人もいれば、早い段階で相談できる人もいる。自分の仕事だけを考える人もいれば、チーム全体を考えられる人もいる。
つまり、同じ職場の中には、異なる成熟段階にいる人たちが同時に存在している。
だから組織創りは難しい。
そして同時に、だからこそ組織には、人を成長させる力が必要になる。
組織の成熟度は、そこにいる一人ひとりの成熟度と切り離すことができないからである。
制度だけでは、組織は変わらない
心理的安全性という制度があるわけではない。信頼という制度も、当事者意識という制度もない。
もちろん、それらを支える仕組みを整えることはできる。しかし最後にそれを生み出すのは、そこで働く人間である。
一人の人間が以前より人の話を聞けるようになれば、周囲は話しやすくなる。誰かが失敗を隠さず話せるようになれば、別の誰かも相談しやすくなる。自分の仕事を越えて仲間を助ける人が増えれば、助け合うことが特別なことではなくなっていく。
一人の管理職が、部下を単なる労働力ではなく、一人の人間として見るようになれば、その職場の景色は少しずつ変わる。
CHANGE
2026.07.21
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2026.08.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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