AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその4つめ──「精錬」。
「既成概念」というラクな思考
私たちは往々にして、自分のなかにいったん取り込んだ概念や考え方を固定化させてしまう傾向があります。人間は自己のなかにいったん物事の処理回路(=思考の枠組み)をつくってしまったなら、それをむやみに変えようとはしません。変えないほうがラクだからです。その観点からながめると、既成概念はいわば、思考の省力回路であり、変えたくない安心回路といえます。
そのように人間がある部分、安定を選びたがる性質をもつことは自然なことです。しかし、そこに安住しきってよいということではないでしょう。どんな概念・考え方も完全ではありません。また、そもそも概念・考え方は自分が変わっていくとともに、また、環境が変わっていくとともに、変化が必至のものです。さらには、世の中にはいまだ概念化されていないことが無数あり、あなたによってとらえられることを待っているかもしれません。

私たちは「卵は丸い。丸いから立たない」と思っている。そして実際に立ててみようと、神経を集中して試みる。……案の定、うまく立たない。「やっぱり立たないか」とそれで安心する。
しかしコロンブスは、卵の底をテーブルにガツンとぶつけて殻を壊し、立たせてみせた。

それを見て、事後に「なーんだ、そんなこと(殻をつぶしていいのなら、だれだってできたさ)」と思います。が、その最初に起こす既存の枠外からの発想と行動こそがむずかしい。
ほおっておくと、私たちはついつい既存の考え方や枠組みのなかで思考を怠けがちになります。そんななかでコンセプチュアル思考4番目の基本スキル「精錬」は、物事につねに新しい目線や切り口を与え、概念を進化・深化・創出させていく作業になります。

二項対立を超え第三の答えをつくり出す
私たちは物事をとらえようとするとき、二項対立という形をよくとります。「白か、黒か」とか「善か、悪か」のように。
二項対立というアプローチ自体はけっしてわるいものではありません。二元論のように、そこで扱われる2つの要素が根源的であればあるほど、深い思索を生むものです。
しかし問題なのは、二項の比較や評価だけに目がいき、安易に二者択一に走って、結局出す答えは「妥協の折衷案」に陥ってしまうことです。そこには自分の選択肢がAかBしかなく、両方の部分的な組み合わせだけで済まそうとする態度があります。

そんなときに学ぶべきは、弁証法といわれる思考法です。
弁証法を簡単に説明すると──
1) ある意見・考え方[正|テーゼ]があり、
2) それに対立する意見・考え方[反|アンチテーゼ]がある。
3) そこから両者をより高次のレベルで統合し、
新しい結論[合|ジンテーゼ]を導き出すこと。
このプロセスは「止揚|アウフヘーベン」とも呼ばれます。
この弁証法における止揚というプロセスで重要なことは、「正か、反か」という二項の世界に思考を閉じてしまわず、次元を上げて第三の選択肢をつくり出すことにあります。
AI時代 人間に残される思考は「概念的思考」になる
2026.08.15
2026.08.17
2026.08.24
2026.08.29
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。
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