「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまで『ゼロ金利政策』を続ける」という黒田春彦・日銀総裁。その金融政策への「突っ込み」の第三弾として、『ゼロ金利政策』は実は一般の生活者からの収奪で、緊急避難的措置だったはずなのにずっと続けられているのは何故かという点について考えてみよう。
前々回と前回の記事では「(1)消費者物価指数2%アップ目標は適切なのか」「(2)消費者物価指数の測定方法は正確なのか」という疑問を続けて指摘した。今回は少し観点を変え、日銀の掲げる『ゼロ金利政策』は一体どんな効果を期待されているのか、本当は誰にとって得なのか、という観点から突っ込んでみたい。
『ゼロ金利政策』とは金融政策の一つで、短期金利(銀行同士が短期の資金取引を行う市場である「コール市場」において、借りた翌日に返す際にかかる翌日物金利)を実質ゼロまで下げる政策を指す。
この短期金利が一種の基準になり、銀行からの貸し出し金利が決まるのである。通常、低金利政策を執る際の期待効果としては、銀行からの貸し出し金利を安くすることでお金を借りやすくし、企業活動を活発化させることで景気を回復させることが挙げられる。
しかし短期金利をゼロにするというのは低金利政策の極端な格好であり、デフレ回避に向けた窮余の策とされる。金融市場の一時的混乱で、優良な銀行や企業までもが資金が借りられないことによって倒産してしまう事態を避けるためであり、大不況時の緊急避難的措置として取られる金融政策である。
しかしこの日本国では、その極端で緊急避難的な措置が1999年2月以降2000年8月まで行われ、一旦解消されながらも2001年3月以降、今に至るまで続けられている。これはかなり異常な状態なのである。
では、大不況時でもない(というかむしろ今はこの4半世紀で最も景気がよい)ため「不合理な貸し渋りによる連鎖倒産」が起きるはずもない今の時期における『ゼロ金利政策』はどんな効果(副作用も含め)をもたらしているのだろうか。
報道などでよく目にするのは「金融機関が収益を上げにくくなっている」という側面である。金融機関がお金を調達するコスト(預金者への金利)も安くなるが、貸し出し金利も安くなっているため、彼らの収益の源である利ザヤが縮小しているのだ。
特に金融機関が貸したい優良企業ほど業績がよくて内部留保もあり、目先に大きな投資がなければ資金需要は大してない。せめて運転資金だけでもと色んな金融機関が争って貸し出そうとするため(しかも大手企業なら社債という手もある)、とにかく低金利を提示するしかない。そのため、利ザヤはずっとカツカツなのだ。
しかし「金融機関が収益を上げにくくなっている」からといって世論が「じゃあゼロ金利政策を見直せ」とはならない。むしろ「いい気味だ」という反応すら出かねない。だから政治家も動かない。
社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮 パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/
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