日銀政策への疑問(3)ゼロ金利政策は何のためか、誰のためか

画像: Petra Wessman

2018.10.24

経営・マネジメント

日銀政策への疑問(3)ゼロ金利政策は何のためか、誰のためか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまで『ゼロ金利政策』を続ける」という黒田春彦・日銀総裁。その金融政策への「突っ込み」の第三弾として、『ゼロ金利政策』は実は一般の生活者からの収奪で、緊急避難的措置だったはずなのにずっと続けられているのは何故かという点について考えてみよう。

そしてもう一つ忘れてならないのは、日本政府もこの『ゼロ金利政策』で最もおいしい目を見ている一員だという事実だ。圧倒的な債務によって本来は身動きが取れないはずが、この超低金利と貸出先不足によって運用先に困った金融機関を中心に、国債の買い手を確保できている。仮にゼロ金利政策を止めてしまうと、その構造が逆回転を始めてしまう恐れがあるのだ。

現在政府の負債総額は1000兆円超もあるから(平成29年12月末時点で1,085兆7537億円)、もし金利が1%上昇しただけで利払い費は年間3.6兆円程度も増えてしまうという(2017年1月25日付の日本経済新聞)。これは消費税でいうと2%弱のアップに相当する計算になる。しかも金利上昇が始まったとたんに国債の買い手がいなくなってしまう可能性を考えれば、政府の財政は破綻しかねないという懸念もある。

結局のところ、日銀ひいては日本政府が『ゼロ金利政策』を止められないのは、こうした「逆回転」へのトリガーを引くことになるのが怖いからだという結論になる。つまり我が政府はそもそも出口戦略を考えずに『ゼロ金利政策』を始めた疑いが強いという、何とも背筋が凍る話だが、不可思議な政府・日銀の行動の理由としては頷けるものだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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