海外を向く中小企業 (12) 漂流するタイ国にどう向き合うべきか

画像: Paul_the_Seeker

2014.05.24

経営・マネジメント

海外を向く中小企業 (12) 漂流するタイ国にどう向き合うべきか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

ついに軍によるクーデターにまで行き着いたタイ。どうやらタイの軍部は局面打開のため周到に機会を窺っていた模様だ。事態も行方も不透明だが、日本の官民にはやるべきことがある。

つまりどうせ非難される武力鎮圧に踏み切らざるを得ないのなら、抜き差しならない事態に追い込まれてやるより、未然の段階でかつ迅速に事態を収拾したいということだったのだろう。

だからこそ一度は対話の場を提供したという「アリバイ工作」をした上で、その茶番劇をずっと続けるのは馬鹿くさいので、「だまし討ち」的段取りではあっても、早めのクーデターを手際よく成就させたのではないだろうか。なかなかの切れ者がタイ陸軍にはいるようだ。

しかし問題はこの後だ。プラユット司令官を議長とする国家治安維持評議会は、全権掌握を宣言した上でプラユット氏に首相権限を付与したそうだが、両派の対立をどう決着させ、内外の非難が高まる(そして経済的ダメージが効いてくる)前に民生にどう移管するのか、現時点では全く見通せない。

1回目の両派の対話では、調停役にあたるプラユット司令官は、現内閣が総辞職した上で、選挙を経ずに暫定政権を樹立、6~9カ月以内に総選挙を実施することなどを提案していたそうだ。彼は、前回当時のタクシン首相を放逐したクーデターの実行指揮者でもある。

そして現在、インラック前首相をはじめ、タクシン派(タイ貢献党および反独裁民主同盟=UDD)の幹部に出頭要請が続々と出されている。ゆえにタクシン派からみれば、軍は明らかに「反タクシン寄り」に映っているはずだ。

元々「今度クーデターが起きたら反対行動に立ち上がる」と幹部が公言していた経緯を考えると、タクシン派はプラユット氏の指導に素直に従わず、その拠点の北部地方でデモ蜂起、そして武力衝突が起きる可能性すらある。これは大きな不透明要素だ。

一方、反タクシン派のほうは、自分たちの主張を軍がある程度掬い取ってくれそうな雰囲気から、大きな反発の様子は見せていない。現実問題として、象徴的リーダーのアピシット氏もデモ首謀者の行動派・ステープ氏も軟禁されているようで(しかも携帯電話等を取り上げられており)、何か指示をしようにもできない状況だ。

反タクシン派の支援者の主力はバンコク経済界であり、商店主たちだから、むしろデモ合戦がどういう形にせよ収まってくれたことにほっとしているのが本音だろう。

とにかくいずれの関係者も短気を起こさずに、賢く政治的妥協を図ってもらいたいものだ。

タイ進出を検討していた日本企業では、当分この地への新規進出は検討アジェンダから外されるだろう。実際のところこの動きはすでに数カ月間止まっており、弊社のビジネスにも影響がある。タイ経済にとっては痛手だが、身から出たサビだから仕方ない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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