タイの政情混乱は長期化の様相を見せている。その主体である反政府派と野党・民主党、その支持者である都市住民の中間所得者層は、この混乱がもたらしかねない、さらなる危機のリスクを軽視している。彼らは自らの首を締めつつあることにも気づかないようだ。
反政府デモが続くタイでは、インラック首相が自体打開を狙って議会選挙の実施を決め、今月2日に厳戒態勢のなか投票が行われたが、デモ隊の妨害で選挙区全体の2割近くで投票が中止に追い込まれ、選挙が成立しない事態になりそうだ。政府は選挙が成立するまで何度でも実施するとしているが、野党寄りの憲法裁判所が選挙を無効と判断する事態もありそうだ。対立と混乱を収めるはずの選挙がむしろ対立と混迷を深めるだけに終わりそうで、同国の混乱は長期化が予想される。
反政府派(=反タクシン派)を支持する中間以上の所得層で都市住民(小生の知人の多くもこちらに属する)は意外と平気を装っており、有名なビジネス界の支持者なども「タイにはタイの民主化プロセスがある」とか「今の議会選挙は不正だらけなので、民意を正しく反映することはできない」と主張したままで、強硬にインラック首相の退陣を求め続ける方針に変わりはないようだ。
しかし彼らは、今この世界情勢の下で、この反政府派の行動と政情不安がもたらす同国経済へのリスクの意味を本当に分かっていないのではないかと思える。彼らの楽観主義の根拠は、「2011年の洪水騒ぎでタイからの投資引き揚げが大量に発生するかと心配されたが、実際にはむしろ翌年からタイ進出が急増した。今回もいずれ解決するから大した心配は要らない」というものだ。
しかし2012年のタイ進出急増の要因は、日本の自動車メーカーや電機メーカーがサプライチェーン再編のために部品メーカーに現地進出を促したからだ。今回、そうした特需の要素はない。
先月の時点でも小生はかなり心配していた。
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しかし今、事態はもっと悪くなっている。この騒動のとばっちりを受けて、同国での海外からの商談の多くが中断の憂き目に遭っているのだ。同国に事務所を開こうとしている日本企業の担当者が諦めて帰国したり、インドネシアなど他の国と進出先を比較していた企業がタイをあきらめたりしていると聞いている。同国に先行して進出した日本企業が今、デモのせいで売上が半減している状況を見ているからだ。
小生が直接関わっているプロジェクトでも、予定していたバンコクでの打ち合わせが延期されたまま消滅するかも知れないし、同国は進出先候補として順位が下がりつつある。一昨年から昨年にかけての、熱に浮かれるような投資熱は、今はもうない。
アジア市場進出
2015.03.24
2014.05.24
2014.04.24
2014.03.03
2014.02.09
2013.05.31
2013.04.26
2013.04.16
2013.04.10
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮 パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/