海外を向く中小企業 (10) 日本ポリグルに見る、BOPビジネスの極意

画像: Jake Stimpson

2013.05.31

経営・マネジメント

海外を向く中小企業 (10) 日本ポリグルに見る、BOPビジネスの極意

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

地味なニッポンの浄水剤メーカーが世界で称賛されている。その心意気と同時に参考にすべきは、発展途上国の人たちと共に歩むそのBOPビジネスモデルだ。

日本ポリグル。主力商品は水質浄化剤で、従業員30数名。どこにでもありそうな中小企業である。

しかしこの会社、国際支援に積極的で、幾つかの国際機関にはとみに名が知られている。安全な飲み水が手に入らない地域の命と健康を守るのに、同社の技術が欠かせないからである。

テレビ東京系列『ガイアの夜明け』などで何度か放送されていたので、御記憶の方もいるだろう。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview...

世界有数の紛争地・ソマリアのある避難民キャンプ地周辺にはまともな飲水がなく、避難民たちは600m先を流れる泥川(生活排水と工場排水が混ざって、淀んでいる)の水を汲んで飲食に使っていた。そのせいで大半の子供達が健康被害を起こし、大人でさえ体調が悪くなっていた。

そこで、IOM(国際移住機関)が日本ポリグルの小田会長に依頼し、現地の水事情を改善するために協力を依頼したのだ。

とはいえ、当地は無政府状態の内乱国で、国際機関の職員でさえ銃撃されたり拉致されたりする。外務省のHPに「渡航しないよう」明記されている地域の一つである。それでも結局、小田会長は社員を引き連れて渡航し、傭兵に守られて現地入りし、難民キャンプに浄水施設を作ってあげた。

そこで使われる「魔法の浄水剤」が同社の製品である。納豆のネバネバ成分を基に作られたこの浄水剤(汚れ成分の凝固剤)を溶かすと、汚れきった水がみるみるうちに綺麗になり、あとは濾過すればおいしい「安全水」になる。実に素晴らしい技術である。

今ではソマリアの難民キャンプでは、13カ所に同社の浄水施設が設置されているそうだ。難民たちに浄水剤を継続的に買うことはできないので、その後は日本政府が日本ポリグルから買い上げて難民キャンプに供給する。

しかし過去、同社が同じ様に水事情を改善させる協力を果たしたバングラデシュの貧しい村では、地域に根差して会員制の水販売システムが成立している。

日本ポリグルの現地社員「ポリグルBoy」たちが浄水施設を管理し、作った安全水をポリタンクに詰めて配達する。家々を回っての集金は女性社員「ポリグルLady」たちがこなす。お陰で地域の人たちは安全水を安く安定供給され、現地社員たちも現金収入で少しずつ暮らしがよくなっているという。

この成功をみて、県知事が県全体に拡げたいと同社に要請したので、この仕組みはもっと拡がる。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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