コンシャス・キャピタリズムも「キャピタリズム」

「世のため、人のため」だから、利益は重視しない?・・・いいえ。コンシャス・キャピタリズム(意識の高い資本主義)も、利益創出なくしては成り立ちません。

利益が出なければ、コンシャス・キャピタリズムが目指している「社会に対する価値創造」も、「従業員が健やかに、やりがいをもって働ける職場環境の提供」も実現できないわけですから、これは当然のことです。

従来型のキャピタリズムとコンシャス・キャピタリズムが根本的に異なるのは、「利益最大化を本旨としたキャピタリズム」ではないということです。利益は大きければ大きいほど良い、利益拡大のためなら他を犠牲にしても良い、という考え方ではありません。むしろ、重要視しているのは「(社会)価値の最大化」です。

しかし、それでいて、コンシャス・キャピタリズムの実践企業は、従来型の企業の標準をはるかに超える利益を上げ、長期的に安定した成長を実現しています。「利益最大化を本旨とせずに利益を上げる」という逆説が成立しているのです。コンシャス・キャピタリズム研究の権威である米マサチューセッツ州ベントレー大学のラジ・シソディア教授によると、1996年から2011年までの15年間、コンシャス・キャピタリズム実践企業の業績と株価を追跡したところ、コンシャス・キャピタリズム実践企業が1,646%の投資リターンを生み出しているのに対し、米国株価の代表的な指数とされるS&Pのリターンはわずか157%に過ぎません。

コンシャス・キャピタリズムでは、ビジネスは財務価値だけではなく、「知的価値、関係性価値、感情価値、精神価値、文化的価値、健康価値、自然環境価値」など、いろいろな価値を生んで社会に貢献できる仕組みであると提唱しています。(余談ですが、今回のカンファレンスではランチのブュッフェに菜食主義やビーガン(卵も乳製品も食べない菜食主義者)の人たちのための献立も用意し、また、ホール・フーズのサプライヤーと思われる人たちがブースを出店して、健康と環境に配慮したデザートやドリンクを配っていました。)次回から、これらの社会価値創造と利益創造を両立して実践している企業の例について書いていきたいと思っています。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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