「サービスサイエンティストという役割を置けば、本当に現場は変わるのか?」 この新しい役割について説明すると、多くのリーダーからこうした率直な疑問が寄せられます。 「かえって会議が増えて現場が忙しくなるのではないか」「成果が見えにくいのではないか」といった不安が生じるのは当然かもしれません。しかし、結論から言えば、現場は確実に変わります。ただし、その変化は決して派手なものではありません。時間が経つほどにじわじわと効いてくる、「価値が生まれる構造」そのものの変化なのです。
現場の会話が「精神論」から「構造論」へ変わる
サービスサイエンティストが組織に加わって最初に起きる変化は、現場で交わされる「言葉」の変化です。
これまでの現場では、うまくいってもいかなくても、「お客様の反応が良かった」「次はもっと頑張ろう」といった感覚的な振り返りで終わることが多くありました。これは改善が「点」で終わってしまい、組織の資産として積み上がらない状態です。
サービスサイエンティストが入ることで、会話は次のように進化します。
• 「なんとなく良かった」から「どの期待に効いたのか」へ: 顧客のどの「事前期待」に対して、どの体験が、どの順序で効いたのかを論理的に分析できるようになります。
• 「もっと頑張ろう」から「ここを変えれば良くなる」へ: 改善の方向が精神論から構造論に変わることで、「やらなくていい努力」が明確になります。その結果、現場の負担を増やすことなく、効率的に価値を高めることが可能になります。
価値の「見取り図」が、迷いをなくす
サービスサイエンティストの重要な仕事の一つに、「価値の可視化」があります。 顧客の期待がどこで生まれ、どこでズレ、どこで評価に変わるのか。この一連の流れを一枚の構造図(見取り図)に落とし込みます。
この図があることで、現場のスタッフ全員が「今、自分たちはどこを改善すべきか」「守るべき自社の強みはどこか」を一目で理解できるようになります。改善活動が場当たり的な対応ではなく、全体設計に基づいた「計画的な進化」へと変わるのです。
異業種事例を「自社の武器」として実装する
第5回でも触れた「異業種の翻訳」も、現場で大きな力を発揮します。 サービスサイエンティストは、他社の成功を表面的な「施策」や「機能」としてそのまま持ち込むことはしません。
「なぜそのモデルで継続利用が生まれるのか」というサービスモデルの構造を抜き出し、自社の文脈に翻訳して現場に届けます。これにより、単なる流行りの真似事ではない、自社独自の進化を伴った施策が次々と生まれるようになります。
経営の「投資判断」が確かなものになる
変化が起きるのは現場だけではありません。経営層にとっても、サービスに対する「判断」の質が劇的に向上するというメリットがあります。
これまでは「現場の声」や「一部の数字」をもとに、半分は賭けのような気持ちで投資判断をしていたかもしれません。しかし、価値が構造化されることで、「どの期待に、どんな価値を、どのくらい積み上げているか」という情報に基づいて判断できるようになります。
新刊『事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~』
| 提供会社: | サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング) |
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2009.02.10
2015.01.26
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新
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