商社マン しんちゃん。 走る! (21)

2009.09.08

営業・マーケティング

商社マン しんちゃん。 走る! (21)

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。

【前号までのあらすじ】

海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか?  一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。  ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。 そこでは、日本ではとても経験できそ
うにない体験が待っていた。
いよいよ海外の顧客とのネゴシエーション(交渉)が始まった。
さー百戦錬磨の中東のクライアントにしんちゃんはどう立ち向かう
のか?

今回は結構楽な出張だなと宮田は内心そう思い始めていた。

 < 商社マンっちゅうのも結構楽かも。 主役は丸の内さん
   やし、こっちは会議中、小難しそうな顔して、会議の隅で黙
   って座っとれば行けそうや >

ところが、三日目の最終日の夕方、会議がこれでまさに終わるかと
思えたところ、アロイコの調達部長ムハンマドが、突然アロイコを
代表してこう言い出してきた。

「大日本商事/丸の内重工連合のコンソーシアムには、ある点で我々
 は大変失望している。 
 なぜなら、そちらの提案は明らかにオーバースペックとなってい
 る。 我々が要求していない設備までもが入っているからである。
 これは明らかな過剰仕様と言わざるを得ず、そのため価格も他社
 と比べて高くなっており、このままでは発注できない。

 従ってこのままの仕様で価格を下げるか、この過剰仕様のところ
 を削除して再見積もりするかにして欲しい。
 でないと、この案件は、それで終わりということになる」

オーバースペックとは、本来顧客が欲しいとして要求していない仕
様を含む、それ以上のものまで過剰に提案に含まれているという提
案内容のことをさしている。

突然のことなので、日本側は呆然として皆がお互い顔を見合わせた。

  < な、何やねんな。 このおっさんは。 ほんま、急に!
    しばいたろか! >

半分居眠りをしていた宮田は周りのざわつきで目が覚めて、ハっと
して身を乗り出して尋ねた。

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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