商社マン しんちゃん。 走る! (23)

2009.09.22

営業・マーケティング

商社マン しんちゃん。 走る! (23)

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役社長

~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。

 【前号までのあらすじ】

海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか?  一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。  ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。 そこでは、日本ではとても経験できそ
うにない体験が待っていた。
いよいよ海外の顧客とのネゴシエーション(交渉)が始まった。
さー百戦錬磨の中東のクライアントにしんちゃんはどう立ち向かう
のか?

< どうもイランでは別室に連れて行かれることが多いな。
   こういう形で呼ばれると、ほんま、ろくなことあらへん
   がな  >

と思いながら、ムハンマド部長と向かい合わせで席についた。

宮田の嫌な予感は的中した。

ムハンマド部長は宮田を高圧的に威嚇するように睨み付けてから、
おもむろにこう言い放った。

「今回、コマーシャルマターに関して、大日本商事だけに言うが、
 3つの重要な要求がある。

 一つめは、先ほど要求したオーバースペックの件での値引き後の金
 額の再提示。

 二つめは、契約書に関することだが、前日送ってもらった大日本商
 事が作った契約書のドラフトには大きな問題がある。

 契約書の表紙の一番最初の行に、{アッラーの偉大さは極まれり。
 絶対なる神アッラーの名の下に}という文言を入れてもらいたい。

 < ハ、ハー? な、なんなん? それ? アッラーの神??? >

ムハンマド部長は動揺する宮田を無視するかのように続けた。

「これが無い契約書に我々はサインすることが許されていない。
 いいか。

 次に、三番目である。
 これは、L/C開設銀行をイラニアン銀行から、テヘラン商業銀行に
 変えてもらいたいということだ。

 これら3点を、明日朝始まる最終会議の席で回答願いたい。
 以上!」

宮田は、一字一句メモを取り終えた後、席を立って去ろうとしている
ムハンマド部長にひとつだけ質問をした。

「Mr.ムハンマド。 貴社アロイコは今回の圧延機でアルミ箔の
 生産も念頭に入れていると思いますが、他製品とのプロダクト
 ミックス(製品の品種の多様性)はどれぐらいのパーセンテージ
 ですか?」

一瞬、何を聞くのかというように宮田を睨み付けていた部長であったが、こう話し始めた。

「アルミ箔は我々の大事な戦略商品と認識している。 今後数年間で
 イラン国内のアルミ箔の需要は2倍以上となると予測している。 
 従って、少なくともこの圧延機における生産量の半分以上はアルミ
 箔を狙いたいと思っている」

半分以上という言葉を頭に叩き込んだ宮田は部長に挨拶をしてその場
を後にした。

 <  そうかいな。 半分以上かいな・・・  >

次号に続く。

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役社長

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント (財)生涯学習開発財団認定コーチ 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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