センスの仕事を、組織能力に変える ― サービスサイエンティストという「第二の専門性」というパスポート

2026.05.18

経営・マネジメント

センスの仕事を、組織能力に変える ― サービスサイエンティストという「第二の専門性」というパスポート

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

どの企業の現場にも、「あの人が担当すると、なぜか顧客満足度が高い」「あのチームは、理由は分からないが常に高い成果が出る」といった、いわゆる「センス」の持ち主が存在します。しかし、そうした個人の活躍に頼っている限り、組織としての成長には限界が訪れます。 なぜなら、その優秀な担当者が異動や退職をした途端、成果が再現されなくなってしまうからです。マニュアルを整え、丁寧な引き継ぎを行っても、同じ結果にはならない。それは、価値が「センス」として個人の中に閉じ込められているからです。

「才能だから採れない」という最大の誤解

こうした状況に直面したとき、多くの企業は「結局、あのような人は才能だから、うちにはいないし採用もできない」と諦めてしまいがちです。しかし、これはサービス分野における最大の誤解と言わざるを得ません。

一見、天性の才能に見える彼らの振る舞いも、実は以下のような構造的な能力を無意識に扱っているに過ぎません。

• 顧客が抱く「期待のズレ」を敏感に感じ取っている

• 価値が生まれる決定的な「瞬間」を見極めている

• 顧客の言葉にならない不満を、具体的な改善へと翻訳している

これらは決して生まれ持った才能ではなく、後天的に獲得可能な「専門性」可視化・言語化し、再現可能な「技術」へと昇華させることなのです。

「専任職」にすると失敗する理由

では、サービスサイエンティストという役割を正式に置き、専門家を採用すれば解決するのでしょうか。実は、ここにもう一つの落とし穴があります。

サービスサイエンティストを最初から「現場と切り離された専任職」として配置しようとすると、多くの場合失敗に終わります。現場の制約を知らず、机上で価値を語るだけの専門職は、最も現場から信頼されない存在になりかねないからです。

サービスサイエンティストの仕事は、現場と密接に結びついて初めて機能します。そのため、外部から専門家を連れてくるよりも、「すでに特定の専門性を持つ社内の人材」に、この視点をインストールすることが、最も効果的なアプローチとなります。

武器を増やす「π(パイ)型人材」への進化

サービスサイエンティストとは、最初からそれ単体で存在する職業ではありません。すでに何らかの武器を持っている人が、もう一つ手にする「第二の専門性」です。

• 「開発」 × サービスサイエンス

• 「営業」 × サービスサイエンス

• 「企画」 × サービスサイエンス

• 「現場運営」 × サービスサイエンス

このように、既存の第一の専門性にサービスサイエンスを重ねることで、初めて現場での実装を伴う力が生まれます。これは、従来の「T型人材」を超えた、二本の主軸を持つ「π(パイ)型人材」への進化と言えるでしょう。現場の痛みや制約を知っているからこそ、設計図が「浮いた存在」にならず、組織を確実に前に進めることができるのです。

視界を変える「パスポート」としての専門性

この「第二の専門性」を手に入れることは、組織内のあらゆる領域へアクセスするための「パスポート」を手にするようなものです。このパスポートを持つことで、見える風景、担える役割、そして活躍できるフィールドが劇的に広がります。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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