少子化問題の根本的解決には実質的な移民政策の転換が必須だ

画像: BiblioArchives / LibraryArchives

2023.05.24

経営・マネジメント

少子化問題の根本的解決には実質的な移民政策の転換が必須だ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

少子化問題は突き詰めると「人手不足」「社会を支える資金負担者の不足」「需要不足」の三つに集約される。その根本的な解決には生産年齢人口を増やす以外になく、実質的な移民政策の転換に踏み切るしかないところまで事態は来ている。

この第三の大問題に対し民間企業が打てる最善の策は、不足する需要を海外に求めることだ。具体的には越境ECを含む産品の輸出であり、インバウンド需要の呼び込みである。この点、日本企業・団体の近年の努力とその成果には敬服すべきものがある。とはいえ、国内需要の縮小額に比べ海外需要の開拓実績額はまだまだ圧倒的に小さいのが現実だ。

産品輸出やインバウンド需要への対応についてはまだ改善の余地があるとは見込まれるが、それでも(元々の国内需要の規模という「母数」が大きいだけに)少子化に伴う国内需要の減退ペースをカバーすることは到底できない相談なのである。

結局、第一から第三のいずれの問題も、生産年齢にある現役世代がどんどん減っていく状況を改善しない限り、今の対策では問題悪化ペースを多少緩和することはできても、悪化傾向自体に歯止めを掛けることは難しいのだ。

4.政府の「少子化対策」は当てになるか

そこで日本政府が今、懸命に打ち出そうとしているのが「少子化対策」なのだが、その中身を見ると、岸田政権の政治的努力は多とするが(もちろん、対策を執ろうとも考えなかった過去の政権よりは格段に上等だが)、残念ながら一世代つまり30年ほど遅すぎるのだ。

既に子どもを生める年齢の女性たちが格段に減ってしまった今からの対策としては、抜本的に少子化を解決に向かわせるほどのインパクトはない。あまりに一面的で(具体策にまで落とし込めているのは、既に子どもを持ちたいと考えている人たちの目先の困り事に対処することだけ)、「異次元」というにはあまりに限定的なのだ。

本稿はこの「政府対策への批判」が本筋ではないのでここまでに留めるが、いずれ別途考察したい。とにかく申し上げたいことは、政府が掲げる今の「少子化対策」で日本の少子化傾向を反転させることは難しいということだ。

5.有効な打ち手は何か

すると少子化はまだまだ進み、三大問題の「人手不足」「社会を支える資金の出し手不足」「需要不足」に対する歯止めもしくは緩和の手はまったくないのだろうか。

そんなことはない。社会全体での覚悟さえ決めれば実は打ち手はある。その決定的な一手は、外国人の就労・定住条件を大幅に緩和するという出入国管理政策の転換だ。

実は2021年時点での日本での外国人労働者総数は約150万人とされ、日本社会は既に外国人労働者に支えてもらうことが実質的に不可欠になっている。しかし定住や家族帯同に対しあまりに厳しい制約を課していることで、少子化対策としての有効な手段になる道を阻んでいるばかりか、問題すら生んでいる(例えば技能実習制度は建前と違って歪んだ実態のため不法就労問題や犯罪を生んできた。この件に関して小生は何度も指摘している)。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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