少子化問題の根本的解決には実質的な移民政策の転換が必須だ

画像: BiblioArchives / LibraryArchives

2023.05.24

経営・マネジメント

少子化問題の根本的解決には実質的な移民政策の転換が必須だ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

少子化問題は突き詰めると「人手不足」「社会を支える資金負担者の不足」「需要不足」の三つに集約される。その根本的な解決には生産年齢人口を増やす以外になく、実質的な移民政策の転換に踏み切るしかないところまで事態は来ている。

他にもよいことがある。例えば社会の多様化が進むことでイノベーションが生まれる余地も広がろうし、英語などの外国語を学ぶ必要と使う場面がさらに増えることでインバウンド対応も底上げされるし、海外で活躍できる(そしていつか帰国して日本に貢献する)人材が増えることも期待できる。

6.反対論への反論

もちろん、この提言に対し、外国人就労者および移民の人口が急増することで「単一民族たる日本人の統一性が失われる」とか「社会不安が増大する」とかいう反対論がそこかしこで唱えられることは十分想定できる。しかしよく考えて欲しい。

まず「日本人」の祖先自体が、相次いでこの列島にやってきた様々なモンゴロイド系の混交によって形成された「異種混合」人種だという事実が厳然としてある。「日本民族の統一性」などという虚構をベースにしたナショナリズムに振り回されてはいけない。

「社会不安」論も「反対のための反対」に過ぎない。今の社会構造のままでも、経済的に追い詰められて犯罪に走る若者が増えており、社会不安を増大させているではないか。その直接的要因は経済格差だが、元凶たる背景は世代間の不公平であり、維持困難な社会制度への不信と将来への希望の欠如である。この社会構造にメスを入れない限り、(外国人ではなく)日本の若者が社会不安の火種になるに過ぎない。

そもそも、我々にはもっと現実的な危機が差し迫っている。今の現役世代のうち中高年世代は近いうちに支えられる側に回るのだ。その時になって現役世代が檄減していれば、第一と第二の問題で指摘したように、まともなサポートは受けられないことは明白だ。

こちらは「社会不安」といった漠然とした話ではなく、確実にやってくる「不都合な未来」なのだ。「ちょっと不安」などと悠長なことを言っている余裕は我々にはないのだ。過疎の村落で「よそ者には住んで欲しくない」などと言っていたら、日々の暮らしさえ成り立たなくなってしまうようなものだ。

今のうちにできる対策として、実質的な移民政策転換を着実に進めるしか、この「不都合な未来」を回避する方法はない。我々は覚悟を決めるべきなのだ。
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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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