総量最大化戦略の誤算:インターネットの喰い潰しと根絶やし

2022.11.28

営業・マーケティング

総量最大化戦略の誤算:インターネットの喰い潰しと根絶やし

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/インターネットができたように、このネット洞窟から抜け出したまともな人々が集まる場が、かならずどこかに新たに生まれる。プロのコンサル、マーケッターなら、いち早くそこを見つけるのがフロンティア・アドヴァンテージの鍵だろう。/

ある秋、ある村は、豊作だった。自分たちでも喰い切れず、客人たちまで招いて、連日連夜のお祭り騒ぎ。それが冬を越えて続いたが、春、蔵を見ると、撒く種籾が残っていない。その村は、潰れた。

漁業でも似たような話は多い。よい漁場が見つかった、とのウワサに、あちこちの港から数え切れないほどの船がやってきて、争って魚を獲りまくった。儲けに儲けて、だれもが壮大なイワシ御殿を建てたが、数年後、そこに魚はもういなかった。

インターネット、と言っても、最初は音声電話回線経由のBBS(電子掲示板)だったが、日本でも最初のものが1982年に開設され、もはやかれこれ40年。スマホとあいまって、いまや、電話やテレビ以上に、生活に欠かせない通信情報機器となった。

とはいえ、twitterに限らず、どうもおかしい。だれでも自分の意見を発信できる民主主義的なメディア、というのがウリだったはずだが、流れてくるのは、どこも同じ話ばかり。それも、なにを成し遂げたのかもよく知らない「有名人」の一挙一投足が事細かに取り上げられている。本屋の棚に並ばないような良書を長く売るロングテール戦略、なんて言っていたアマゾンも、売れ筋ばかりがお勧めされる。まして、googleやbingは、多様性を探るどころか、SEO(サーチエンジン最適化)工作したサイトばかりが上位に出て来る。同系統のyoutubeも、いまのケタはずれの「人気もの」がずらっと並び、以前のお気に入りは、検索しても底の方に沈んで見つからない。俗に言う「シャドウバン」。

まあ、ある意味、これもマーケティングとしては正しいのだ。とにかくPVの総量を上げようと思えば、当然にこうなる。雑誌やテレビもそうだ。とはいえ、twitterを辞めさせられた(辞めた?)連中を見ると、みな若い。経営陣も似たようなものなのだろう。だが、これがもし老練のマーケッターだったら、絶対にこんな戦略は採らない。一時的に総量は大きくなるが、結果、短期で市場を喰い潰し、先鋭化して裾野を切り捨て、根絶やしにしてしまうだけだから。実際、雑誌やテレビがダメになったのも、これをやったから。

気がつけば、ガキばかり。連中は時間もあり、受験勉強や資格取得もしないのであれば、ヒマを持て余している。あとは、パソコンだけが友だちの老プロ市民と氷河期ニートか。連中の趣味趣向に合わせれば、総量は最大化できる。とはいえ、そんな得体も知れない連中が言い争い、タメ口でつっかかってくる場など、生活と仕事に忙しいまともな人々は、おのずから足が遠のく。新規参入の余地は皆無で、むしろ撤退に次ぐ撤退。ブログなんかも、閉鎖消滅だらけ。それで、よけいネット商売の企業は、しぶとく残る一部の「メガユーザー」にターゲットを絞り込んで、特化し、先鋭化する。それで、一般の人々の足がまた遠のく。まさに悪循環だ。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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