​老舗温泉旅館の世襲経営者テロ

2023.02.23

経営・マネジメント

​老舗温泉旅館の世襲経営者テロ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ 日本では昔から「売り家と唐様で書く三代目」と揶揄され、米国でも「三世代で裸一貫から裸一貫に(Shirtsleeves to shirtsleeves in three generations.)」、また、スコットランドでは「父が買い、息子が建てて、孫が売り、後の子孫はただの物乞い(The father buys, the son builds, the grandchild sells, and his son begs.)と言う。つまり、老舗没落は、世の定め、人の常。/

老舗、ほど危ないものはない。たいてい世襲で、ろくにしつけもされていないポンコツボンボン。つまり、バイトテロや顧客テロをやらかすオバカ連中の同類。にもかかわらず、まわりがへいこらして、おべんちゃら。マスコミも天まで持ち上げ、目の利かない成金のアホたちが老舗というだけで、法外な価格でも飛びつく。そのうち、勘違いした従業員たちも、オーナーをまねて横柄高飛車になり、それがまた屈折した顧客たちを呼び寄せる。これ、やばくない? と思う従業員がいても、逆恨みが恐くて、もはやだれも本当のことが言えない。

問題を指摘した保健所に虚偽報告して改善措置を取らなかったほど、世間を嘗めてかかっていた不潔温泉旅館もさることながら、同じ旅館業だと、雇用調整金の大金詐取なんていうのも。ちょっと前は、爆走恫喝「くず餅」屋。もともとクズ粉なんか入ってない。数年も前の商品を「炊き直し」で売っていた佃煮屋。賞味期限偽装は、老舗のパン屋や菓子屋でも、あまりによくあること。伝統技芸、医療福祉や政治宗教でも、こんな話があちこちにある。

なんでこんなことになるのだろうか。第一に、ガバナンスが効いていない。世襲ポンコツボンボン(以下、SPBB)からすれば、自分はオーナーなのだから、遊んでいても「配当」を受け取る権利がある。きちんと経営するのは、番頭なり何なりの責任のはず。しかし、いまの時代、番頭以下も、しょせん雇われだから、改革などできようはずもなく、なんの改善もしないまま、ただ現状維持、というか、現状放置。かくして、上から下まで、まったくの無責任体質となる。(番頭がムリに改革しようとすると、早朝に本社前で撃ち殺されたりする。)

第二に、リスクマネジメントができていない。SPBBが度派手な外車で遊び歩いていても、だれも止めない。経営の実情もわかっていないくせに、マスコミや講演会に出たがり、気鋭の新興経営者たちと並んで、より上から目線で老舗の経営理念だの、伝統刷新だのを語りたがる。それどころか、先代からの古参年上の番頭や職人を疎ましく思って、同じように浅はかな同年代の「お友だち」を引き込み、さらには怪しげな占い師や霊能力者に入れ込み、ひっかきまわす。そして、SPBBは見栄っ張りだから、トラブルはすべて隠蔽が基本。しかし、その隠蔽がさらなるトラブルを引き起こし、そのツケの始末を回されるを嫌って、まともな人がだれもいなくなり、いよいよまわりは変な連中ばかりに。(そういえば、そんな総理もいたような。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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