大退職時代と祭りの終わり

2022.08.19

ライフ・ソーシャル

大退職時代と祭りの終わり

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/大航海時代の昔から、企業は、本来、未来の展望を打ち上げ、それに賭けようという資金と人材を集めて海原に挑戦するものだった。ところが、ゴーイング・コンサーンなどと言って、もともと社会にある需要に対して製品を供給する永続的な管理流通を任ずるようになってしまい、その挑戦の気概を失った。/

自分の年齢的なこともあるのか、周辺で退職の話をよく聞く。米国でも、インフレに加えて一千万人もの求人を抱えながら、実際、月ごとに数百万人規模で自主退職が続いているそうだ。日本では、生活保護以下の金額と、すでに事実上、年金制度が破綻していることもあって、管理職定年制や関連会社出向転職などの中つなぎであまり表面化して問題となってはいないが、内実は若手や中堅の割増早期希望(勧奨)退職、投資資産形成によるFIRE(経済独立早期退職)を含めて、同じような事態が水面下で進行しているように思える。

話題になったのが、この数年であることもあり、コロナ禍のリモートワークが直接原因であるかのように言われる。すなわち、大災害後に似て、家族や地域での時間が増えたことにより、ワーク・ライフ・バランスの見直しが進んだからだ、とも。これを日本で言えば、あの戦争以来ずっと、残業上等、それどころか残業手当無しには家計も成り立たないというような、会社に人生を捧げる24時間総力戦の「社畜」人生が当然とされてきたのだから、なにをいまさらとも思う。むしろ、日本の場合、ワーク・ライフ・バランスの見直しというのも、急激な少子高齢化社会に追いつかない政府の福祉制度との狭間で、孤立した子育て家庭、老いた親の介護など、とくにこのコロナ禍で、やむなく個人に押しつけられ強いられたものではないか。

身辺を見回してみるに、この数十年で国産製品が激減した。「国産」であることが特別で、むしろ宣伝文句になるほどだ。同様に、米国製品も、ほとんど無い。もちろんパソコン関連には米国発が少なくないが、それも権益を米国企業が握っているというだけで、実際に作っているのは、グローバルな連携であって、かならずしも米国人ではない。まして、日本人が自分たちで一から作っているものは、どれほどか。やたら大卒が増大したように、米国も日本も、実際のもの作りを中国その他に外注して、それを管理流通するだけのホワイトカラー企業だらけ。

需要が無いのではない。コロナ禍、ウクライナ問題で、食料や半導体をはじめとするエッセンシャルな素材のサプライチェーンがおかしくなった。このために、実際に販売できる商品の総量が激減。本来ならば、国内生産に切り戻して、需要に応えればよさそうなものだが、いったん外注して製造ノウハウを失ったものは、そうそうかんたんに復活もできない。それで、実際の管理流通の総量に合わせて、企業は縮小し、合理化を図る。それゆえ、企業の管理職ほど、急速に不要余剰化し、窓際で抱える余力も無くなった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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