川崎の中学生殺害事件で責められるべきは誰なのか

画像: J-Castニュース

2015.05.12

ライフ・ソーシャル

川崎の中学生殺害事件で責められるべきは誰なのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

痛ましい事件から汲み取るべき本質は少年犯罪の凶悪化ではない。子供たちを守るための仕組みを崩壊させ放置してきた私たち大人と政府の責任である。

それは川崎事件の本質は、貧困という事情により家庭と学校側に備わっているはずの「子どもを防御する」役割が機能しなかったことであり、それは本来政府が果たすべき役割を果たしていなかったことが原因だと非難されたくなかったということです。ここで本来政府が果たすべきと小生が考えるのは、国の宝である子供たちを守るためにシングルマザー/ファーザーの貧困対策に着手することです。

「川崎事件」の背景と経緯を簡単に確認します。母親が離婚し川崎に移住、母親と上村遼太君(13)を含む兄妹の合計6人でアパート住まいでした。中学校に上がった当初は学校にきちんと通っていた上村君ですが、やがて学校をサボり始めます。そして地域の不良少年グループに誘われて仲間に入り、学校からは足が遠のき、その分だけ不良少年グループと過ごす時間が長くなっていったそうです。

最初のうち上村君はグループのリーダー格である18歳の少年Aを慕っていたそうですが、やがて万引きなどを強要されるようになり、それが嫌でグループから距離を取ろうとしたそうです。しかし自宅アパート前から大声で呼び出されたり、少年Aから暴力を受けたりして、嫌々ながら従っていたようです。その心情を学校の友人にこぼしたところ、友人たちが少年Aを詰問し、それに怒った少年Aが上村君を呼び出し、その際に悲劇が起きたというのが事の経緯のようです。

もちろん、これは憶測や伝聞が入り混じっているマスコミ記事のストーリーですので、事実と違っている部分もあろうかとは思います。本当のところはまだ分かっていません。

ただ、関係者の証言で分かっていることは、次の数点です。上村君はグループから抜けたがっていたこと。しかし諸処の事情でそれを果たせないままに終わったこと。不登校の理由を探ろうと学校の担任の先生は母親宛に連日電話をしたが、ほとんど空振りに終わったこと。そのため、家庭の事情を学校では把握することができないままだったこと。そして上村君の母親は、介護パートとスナック勤めを掛け持ちして朝早くから夜遅くまで働いていたことです。忙しい合間を縫って祖父(母親の父親?)の介護もしていたとの情報すらあります。

一時は学校側を責めようとした人たちは、担任ができることを懸命にやっていた事情を知ると、今度は矛先を変えて、「母親が無責任だ」と無理解で無責任かつ無慈悲な批判を書きなぐった某作家に同意していました。しかし生活費を稼ぐことに手一杯で、朝早くから夜遅くまで働いていた母親に何ができたでしょう。そんな母親の苦労振りを知っていた息子は、母親に心配をかけまいと、個人的トラブルを母親にも学校にもほとんど相談しなかった模様です。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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