社会インフラを考える (1) 五輪向け整備と震災復興の両立のために

画像: Andy Mitchell

2013.09.16

経営・マネジメント

社会インフラを考える (1) 五輪向け整備と震災復興の両立のために

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

東京五輪招致の成功の日、日本列島は喜びに沸き、久々に一体感があった。政府関係者には「五輪をアベノミクスの『第4の矢』に位置付けよう」という声すら出ているそうだ。ちょっと待って欲しい。このままでは被災地の復興は後回しにされ、将来の国民は国の負債に押しつぶされる。

まず自動化技術が切り札の一つになり得る。コマツなどが既に技術的に完成させているのが、ICT建機である。GPSと車体制御技術により、ブルドーザーや油圧ショベルが自動で図面通りに作業を進めることができ、作業の進捗状況もリアルタイムで把握できる。実は今、多くの土木工事現場でのボトルネックは熟練運転者である。彼らがいなくとも建機による作業ができるとなれば、大幅な工事進捗とコスト削減が同時に可能となる。事前の測量も不要で、いいことづくめである。

しかし日本の公共事業の場合(欧米と違って)、ICT建機の作業実績データを検収に使えない。施行業者が当局に提出すべきデータの種類は各種マニュアルで細かく指示されており、そのガイドラインではICT建機は想定されていないため、適用できない。これでは導入効果が半減しかねない。早急な対処を願う。

もう一つの自動化は建設現場での作業ロボットだ。土木・建設現場では天候の影響をまともに受ける屋外での力仕事が多く、体力的にきつい。また、高所や足場が悪い場所での作業など危険を伴うことも多い。そのため恒常的に人手不足なのだ。資材搬送など比較的単純な用途では、既に作業ロボットの実用化が始まっている。こちらは特に規制が邪魔しているわけではなく、大手企業中心に、性能とコストの見合いで導入は進んでいくだろう。

しかしながら土木・建設業界の大半は中小企業であり、彼らにこの数年の特需のために作業ロボットを導入せよと説いても難色を示すだろう。そこで現実的な人手不足解消策は、外国人労働者の活用である。

日本でもバブル経済の頃には多くの外国人労働者が工事現場で働いていた。しかしその後の長期不況に伴い多くの人は帰国したか、他業種に転職した。しかし一部は不法滞在したため、後々社会問題化した。そのせいか、日本は外国人の就労に関してはいまだに非常に保守的である。

現在、日本は単純労働者の就労を認めていない。しかし、今後数年間にわたり大量の土木・建設作業員が必要になることが明確であり、それを日本人労働者だけでカバーできないなら、せめて滞在期間を限定した方式での外国人単純労働者の就労を認めるという規制緩和が望まれる。

彼らに「出稼ぎ」の機会を提供することで、日本のインフラ整備の効率的な実現に協力してもらえばいい。不法滞在者が一定割合発生することは想定内としよう。これは割り切りの問題だ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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