海外を向く中小企業 (9) 中国からの“撤退ブーム”が教えるもの

画像: shankar s.

2013.04.26

経営・マネジメント

海外を向く中小企業 (9) 中国からの“撤退ブーム”が教えるもの

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「脱中国」の動きが盛んだ。きっかけは反日デモと暴動だが、より本質的には、中国が手軽に儲かる生産地ではなくなってきたからである。それは労働者の権利を無視することで成り立っていたビジネスの構造が変質したということでもある。

中国からの撤退は思ったほど簡単ではないとも聞く。撤退時の労働者に対する経済補償金は高騰を続けているし、合弁パートナーには手放す株式の対価を買い叩かれる。「退くも地獄、留まるも地獄」の様相を呈しているようだ。

彼らが今、目指しているのは東南アジアである。確かに中国に比べ東南アジアの新興国ではまだ人件費は安いが、法律やインフラの整備はかなり遅れている。その肝心の人件費はどんどん上昇中である。そしてタイをはじめ各国政府は、人口ボーナスが続くうちに中間層を膨らませるために賃金上昇を促す方向に政策の舵を切ったと考えてよい。

こうした状況を考えると、安い労働力だけを求めてさ迷う中小メーカーの行く末が思いやられる。いずれどんな新興国でも労働者は権利意識に目覚め、賃金は上がる。当面はカンボジア、バングラデシュ、ミャンマーあたりを目指すのだろうが、その先はどうするのだろう。流民のごとくどんどん僻地に移るつもりなのだろうか。肚を括ってビジネスモデルを変えるタイミングが近づいているのではないか。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

フォロー フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。