間違ったABP目標:「全体達成した月は覚えがないですね」

2009.09.21

経営・マネジメント

間違ったABP目標:「全体達成した月は覚えがないですね」

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

「達成/未達成」は営業現場では聞きなれた言葉でしょうね。いわゆるリクルート系、GMO系、どちらの営業にも存在する言葉です。でも、「全体達成なんて覚えがない」と社員が言うようなABP目標を立てていると会社はやはりいい状態とは言えませんね。

 ABP目標とは、アグレッシブだけど、ポシブルな目標のことです。まあ、ノルマというには高いけど、高い目標を掲げるにはいい数字ということです。

 ABP目標に対しては、達成/未達成で、高いインセンティブをつけますね。

 にんじんぶらさげ方式は、営業の世界ではけっこう当たり前です。

 でも、ABP目標をあまりに高くすると、達成しないのが当たり前になってきます。

 そーすると、社員さんは相当しんどい・・・。離脱率も高い。豊かな暮らしもできない・・・。

 雨後のたけのこのようにある通信回線を営業する会社で、異様に高いABP目標を設定しているところがありました。

 社員さんによると、「全体達成?そんな月は覚えがないですね。いや、多分、インセンの設定あると思いますけど・・・」

 うーん。これ、明らかに目標設定としては間違ってますよね・・・。

 でも、この会社のビジネスモデルをよくよく見てみると、20代の若者に月給20万円ぐらいで営業させる。

 1日、テレアポだと150件ぐらいかける。飛び込みだと100件ぐらいかける。まあ、アタックですな。

 それで、案件になるのは、月に2~3件ぐらい。案件化すると、マネジャー同行でクローズ。

 20営業日とすると、テレアポだと、月に3000アタック、飛び込みだと月に2000アタック。

 コストは20万円也・・・。案件の獲得コストは1件、7万~10万円。

 DMを2000~3000件、新規で打つと、30万ぐらいかかりますよね・・・。

 効果は多分、同じぐらいだと思います。

 なんと、人力のほうが安上がり!

 なぜかって?こんな営業、半年続きます?多分、退職金の受給資格得る前にやめるでしょ・・・。

 生き残れる人は売れる人。

 毎月毎月未達成だと気分悪いでしょう?

 まあ、20代のうちに、スーパーハードな営業を一回経験しておくのはいいことだとは思います。その世界を知る人からは、半年もてば多少評価されるでしょう。

 でもね・・・。人材の離脱を前提としたモデルはあんまりいいとは思いません。全体達成がたまにあるようなABP目標。2~3ヶ月に1回は個人達成できるようなABP目標じゃないと・・・。

 で、月給が20万円。食っていけます?こんなんで?

 いや、経営者は食べれますよ・・・。きっと。いや、大儲けでしょう・・・。

 でもねえ・・・。

 上記のように、ビジネスモデルを組む時に、人材の離脱を前提としたモデルも組めます。短期での人材の離脱を前提としてモデルを組めば、DM出すより安上がりにやれなくもないです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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