ウォルマート/アマゾン独占時代を生き延びる、その戦略とは?

2009.07.30

経営・マネジメント

ウォルマート/アマゾン独占時代を生き延びる、その戦略とは?

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

「より多くの選択肢」を、「より安く」、「より簡単に」、探し出すことを求めて、ウェブへの顧客大移動が起こっている昨今。「訪れる意義」ある店舗づくりが問われてきている。一方、アメリカの店舗市場では、ウォルマートがナンバー・ワンを誇る商品カテゴリーが長いリストをなす。ウォルマート/アマゾンが独占を狙う市場で、生き延び、繁栄していくための戦略とは・・・?

最近、買い物をしていて思うこと。それは、アメリカの「店頭」や「コンタクトセンター」などといった、「接点」が大きく豹変してきているということだ。

私がここでフォーカスしたいのは、「人」ならではの力を活用した接点の大変革である。個々人のもつ個性やパーソナリティ、知識や感性、表現力などのアセットを最大限に発揮させ、「唯一無二のお客様体験」の創造をめざす試みが、そこかしこに見られるようになってきているという話だ。

一例として、アメリカに「トレーダー・ジョー(Trader Joe’s)」というスーパーマーケット・チェーンがある。「貿易商ジョーの店」というその名の通り、食品、ワインを中心に、世界中から買い集めてきたありとあらゆる商品をところ狭しと並べて売っている。ほとんどが、この店でしか買えない「プライベート・ブランド商品」であり、行けば必ず、面白いもの、珍しいもの、掘り出し物が売っているという期待感を抱かせてくれる店である。

でも、この店の魅力は、単なる商品力に留まらない。「近所の店」「馴染みの店」を思わせる独特の接客も、他店にはない価値を生み出している。

店ごとに思い思いの装飾を施したレジには、ハワイアン・シャツを着た店員が笑顔でお客を迎える。お決まりのHi, how are you?だけではなくて、「欲しいものは見つかった?」に始まり、買い物カゴの中身についても、和気あいあいとした会話が続く。「それは僕も食べた。最高だよね」とか、「それが好きなら、〇〇という商品も試してみたらいい」などなど・・・。マーケティングの言葉でいえば、「クロスセル」「アップセル」などといった類のトークもあるわけだが、わざとらしさは少しもない。店員がみな、自分の個性を発揮して、お客との触れ合いを本当に楽しんでいる、という感じだ。

かくいう私も、つい先日、このトレーダー・ジョーの店員から、コーンの調理法についてのアドバイスを貰った。「コーンをゆでるなら、お湯の中に砂糖を少しだけ入れるといい。隠し味になるし、日持ちもよくなる」と、店員は親切に教えてくれた。

アメリカの標準から言えば小さめのスペースに、溢れるほど商品を詰め込んだトレーダー・ジョーの店舗は、せせこましくさえ見える。ちょっと視察に訪れるだけではその良さがわからないかもしれない。しかし、我々地元の者にとっては、特別な愛着を感じさせる、「なくてはならない」店舗になっている。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業でNASAプロジェクトなどに関わり経験を積んだ後、82年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「アメリカで『小さいのに偉大だ!』といわれる企業の、シンプルで強い戦略」(2016年4月、PHP研究所)、「未来企業は共に夢を見る~コア・バリュー経営~」(2013年3月発売)、「ザッポスの奇跡 改訂版 - アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。

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