1️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第1章】

2026.07.23

組織・人材

1️⃣人を育てるという仕事― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―【第1章】

富士 翔大郎
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

「研修は組織を変える」と考えた理由 「研修で会社は変わる。」 そう口にすると、「研修だけで組織が変わるわけがない」という反応が返ってくることがある。 その意見は間違っていない。 実際、私も研修だけで組織が変わるとは思っていない。

【連載】人を育てるという仕事

― 2014年の取材記事から、人材育成の本質を考える ―

第1章

「研修は組織を変える」と考えた理由


「研修で会社は変わる。」

そう口にすると、「研修だけで組織が変わるわけがない」という反応が返ってくることがある。

その意見は間違っていない。

実際、私も研修だけで組織が変わるとは思っていない。

それでも、2014年に『人材教育』から取材を受けたとき、記事のテーマは「研修は組織を変える」だった。

なぜ私は、その言葉に違和感を持たなかったのだろうか。

その理由をお話ししたい。

私が人材育成を担当するようになって、最初に感じた違和感があった。

それは、多くの企業で研修そのものが目的になっていたことである。

年間計画を立てる。

受講者を集める。

講師を依頼する。

研修を実施する。

アンケートを回収する。

報告書を提出する。

これで教育担当者の仕事は終わる。

しかし、本当にそれで終わりなのだろうか。

研修が終わった翌日、受講者は何をしているのか。

一週間後、職場で何か行動が変わったのか。

半年後、その学びは仕事の成果につながっているのか。

そこまで見届けなければ、教育の成果は分からない。

私はそう考えていた。

研修はイベントではない。


私はずっとそう考えてきた。

研修とは、人が変わる「きっかけ」をつくる場である。

そして、その変化が職場へ持ち帰られ、周囲へ広がったとき、初めて組織は変わり始める。

一人の管理職が部下への接し方を変える。

一人のリーダーが会議の進め方を変える。

一人の若手社員が、自ら考えて行動するようになる。

その小さな変化が積み重なり、やがて組織文化になっていく。

私は、その連鎖を何度も現場で見てきた。

だから、「研修は組織を変える」という言葉に迷いはなかった。

正確に言えば、

「研修をきっかけに、人が変わり、人が組織を変える」

のである。

もちろん、すべての研修が組織を変えるわけではない。


知識を一方的に伝えるだけの研修。

受講して終わりの研修。

現場と切り離された研修。

それでは人は動かない。

だから私は、研修を企画するとき、いつも自分に問いかけていた。

「この研修が終わった翌日、受講者は何を変えるだろうか。」

この問いが、企画の出発点だった。

教材を作る前に考える。

講師を決める前に考える。

カリキュラムを組む前に考える。

この問いに答えられない研修は、どれほど完成度が高くても、本当の意味で良い研修ではないと思っていた。

振り返ってみると、私は研修を設計していたのではない。


行動の変化を設計していた。

だから、講義だけで終わらせることは少なかった。

受講者同士が議論する。

現場の課題を持ち寄る。

自分の仕事に置き換えて考える。

研修室を出た瞬間から実践できるように設計する。

それが、私にとっての教育だった。



2026年の今、人材育成の手法は大きく変わった。

オンライン研修。

動画学習。

マイクロラーニング。

生成AIによる個別学習。

学びの環境は、2014年とは比較にならないほど進化している。

しかし、一つだけ変わらないことがある。

人は、自分が行動を変えると決めたときにしか成長しない。

AIは知識を教えてくれる。

動画は何度でも見返せる。

教材は自動で作れる。

しかし、「やってみよう」と決めるのは、いつも本人である。

教育担当者の仕事は、その最初の一歩を踏み出せる環境をつくることなのだと思う。


2014年、『人材教育』の記事では、「研修は組織を変える」というテーマで私たちの取り組みを紹介していただいた。

12年経った今でも、その言葉に対する考えは変わらない。

ただ、一つだけ付け加えるとしたら、こう表現したい。

研修が組織を変えるのではない。

研修をきっかけに成長した人が、組織を変えていくのである。

私は今も、そのことを信じている。

次章予告


第2章では、『人材教育』でも紹介されたもう一つのテーマ、「なぜ研修を内製化したのか」を取り上げます。

コスト削減でも、外部講師への不満でもありませんでした。

そこには、人材育成に対する一つの信念がありました。

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富士 翔大郎

人材育成コンサルタント、シニアインストラクター

● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民

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