仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第2弾。「戦略仮説の検証」というものはどういうことを行うのかを具体例を使って紹介したい。
実際、0.5次の検証時にはまったく気にしなかった「価値」の一部の側面に気づかされて評価が途中で大きく変動したターゲット候補市場が続出した。
このプロジェクトではフェーズ2の前半(ステップ3)にて、ターゲット候補市場のそれぞれに対し相応しいビジネスモデルを想定した上で、市場規模を算出する作業を行っている。
その過程で、想定顧客が「本当にそうした強いニーズを持っているのか」「もしこうした新しいサービスが登場したら、お金を払ってまで使ってくれるのか」を探るため、想定される顧客像にプロファイルが最も近い人たちにヒアリングしたり、その既存コメントをSNS上などで探し当てたりしている。または当該顧客層の行動に詳しい専門家の人たちにヒアリングすることもあった。
これは「2次の仮説検証」にあたる。ここで重要なのは、それまではプロジェクトメンバーによる検証(いわば身内による評価し直し)だったのが、この検証では外部の意見という「より客観的な証言」によるものだったことだ。
このケースではフェーズ2の後半(ステップ4)にて、フェーズ1でかなり絞られたターゲット候補市場に対し優先度を決めるため、再度の2次評価を行っている。つまり「3次の仮説検証」を行った訳である。
評価軸そのものはほぼ同じだったが、ビジネスモデルの詳細が明らかになった後でもあり、それぞれの期待市場規模も明らかになった後でもあり、「本当にそうか?」について深い議論ができたと思う。
そしてクライアントはプロジェクト終盤に、優先と決められたターゲット候補市場に対する適用を前提に、PoC(概念実証)という作業を行っている。ここまで概念上だけで考えてきた技術適用のコンセプトを簡単なプログラムに落とし込んで、技術的に実現可能なのか、費用対効果は見込めそうなのか、等といった観点で確認する作業だ。これは「4次の仮説検証」にあたる。
ようやくこれで仮説検証が終わったと考えるのはまだ早い。この検討プロジェクトの後、クライアントは、最優先と決められたターゲット候補市場に対する導入を前提に、実証プロジェクトを行っている。
そこでは実際にある程度のシステムを組み上げ、対象範囲は限定するが、実地でユーザーに使ってもらい、本当にお金を払ってまで利用するのか、使い勝手などで不平・不満は出ないのか、サプライチェーンもしくは関係者がちゃんと機能するのか、等々を総合的に検証している。これは「5次の仮説検証」にあたる。実際の市場導入はそれからだ。
以上、幾つもの仮説検証が段階的に行われ、戦略仮説の確からしさの裏付けが取られていることがお分かりいただけよう。そして、ここで説明した検証頻度は例外的なものではなく、弊社が関与するプロジェクトでの典型的なものだということを付け加えておこう。経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
