仮説検証の必要性について改めて訴える「求められる仮説検証」シリーズの第2弾。「戦略仮説の検証」というものはどういうことを行うのかを具体例を使って紹介したい。
フェーズ1「ビジネス機会の洗い出し」は「当該用途領域で汎用的に想定されるプロセス」×「産業分野」の2次元マトリクスで考え、思いつくだけ徹底的に洗い出すことから始まった。
「想定する用途領域」自体はクライアントとの初期議論である程度絞り込んだ訳だが、それでもかなり広範囲の用途を含むものではあった。そのため「ビジネス機会の洗い出し」について完璧に網羅的な検討は難しいことを提案段階で共有した上で始めている。
とはいえ、良質は量からしか生まれない。実際、弊社側の内部検討では「当たり前過ぎてつまらない」ものや「冗談としか思えない」とか「SFの世界か、数十年後にしか実現しないだろう」とか思えるものも含めて出し切った上で、まともに取り合ってもらえそうな約20のアイディアを最終的には1次候補として俎上に挙げた。
そしてそれぞれのアイディアに利用業界・場面や価値を感じるポイント等を肉付けすることで「ユースケース」として想定し、誰でも分かるようにイラスト仕立てで説明を補強した。
ここまでがこのプロジェクトのフェーズ1の前半(ステップ1)だが、この段階で既に「課題仮説」と主な「打ち手仮説」が出揃っている。
「課題仮説」に相当するのは(Beforeである)「現状のあり方」と「現状の課題・ペイン」であり、「打ち手仮説」に相当するのが(Afterである)当該の技術適用の内容(ユースケース)であり、それによって「誰」にどんな「価値」が生まれるのかを説明した部分だ。
ではこのプロジェクトでは、そうした戦略仮説をいかに検証したのか。
まずはプロジェクトメンバーとの数度の議論を通じて「本当に従来手段よりユーザーにとって格段に便利になるのか」「本当に各関係者にとって経済的にメリットが出るのか」という具合に一部の視点を深掘りすることで「0.5次の仮説検証」をしている。
この過程で、視点に「抜け」があるとか「ちょっと不明確だな」と思えるところは補足、またはユースケースを修正している。
その上で、フェーズ1の後半(ステップ2)においてプロジェクトメンバー総出で、各ターゲット候補である用途市場に対し評点付けを行っている。評価条件は「技術適合性」「領域魅力度」など5分類で、具体的な評価軸は10個ほどあった(個々の説明はここでは省く)。
この評価の議論を通じて、いわば「1次の仮説検証」を行ったことになる。なぜなら評価の視点を細分化することで、それぞれについて「本当にそうか?」を改めて問うたことになるからだ。
経営・事業戦略
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
