年金改革は時間との勝負、国民に移民受け入れと自助の自覚を促せ

2022.12.21

経営・マネジメント

年金改革は時間との勝負、国民に移民受け入れと自助の自覚を促せ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

今の公的年金制度だけでは国民の老後を支えることはできない。この現実を直視するならば、移民政策を変更することと、国民全般に貯蓄と投資の自助努力を促すことは必須だ。

何せこの制度の長期的性格からして、少しの変更が後々大きな額の違いになる、一人ひとりにとっても小さくないが国全体としては膨大な金額が動く。しかも設計次第で将来多くの国民の生活が破綻しかねない、という厄介な制度なのだ。

まず政府が当面真っ先にすべきことは、①マクロ経済スライドを予定通り発動すること、②国民年金への税金投入額を思い切って増やすため、財政健全化を進めること、の2点だ(実際には、防衛費の一挙増額により財政健全化はますます遠ざかっているが)。

でももっと根本的で、しかもやはり急ぎでなすべきことが2点ある。

1点目は予防対策で、公的年金制度が揺らいでいる根本原因を取り除くことだ。その根本原因である「オーナス効果」、つまり年金財源を支払ってくれる労働力人口がどんどん減っている状況を変える必要があることだ。そのためには日本経済における今後の働き手層を増やす、思い切った手段を採ることだ。

既に女性労働者を増やすことや高齢者に働き続けてもらう方向には、人手不足に困った民間主導で動き出している。とはいえまだまだ加速する必要があることも、彼らの労働の付加価値を上げる必要があることも、間違いない。

そしてさらに大きなインパクトをもたらすと期待できるのが移民政策の転換だ。今のような非常に限定的な移民政策(外国人労働者は受け入れるが、国籍取得を前提とせず、在留期間を制限して、家族の帯同を基本的に認めないというもの)ではなく、もっとまともな移民政策に切り替える必要がある。

国粋主義者たちは大騒ぎして移民政策の変更に反対しているが、そもそも日本は技能実習制度による姑息な「外国人労働者の受け入れ」はやっており(しかし建前と実態の違いにより、技能実習制度は国際的な批判に晒されるほど日本の恥さらしになっており、早晩廃止されるだろう)、さらに近年には新在留資格として「特定技能」を創設している。既に移民受け入れを行っている主要な国の中でも第4位に位置する実態があるのだ。

しかしもっと積極的な姿勢に転換し、日本社会を多様化させることで創造性を高め、労働者人口を少しでも増やして日本社会を再起動させるほうがずっと健全で実践的だ。

2点目は事後対策で、(政治家がだらしなくて)年金改革が思ったほど進まない場合に備えて、国民にもっと明確に自助努力を促すことだ。

「公的年金だけでは無理です。ましてや国民年金だけでは生活できませんよ。安全網としての生活保護制度は担保しますが、それに頼りたくなければ、稼げている間に将来に備えてきちんと貯蓄し、可能な範囲で低リスクの投資を積み上げて老後資金を貯めてください」と、責任ある立場にある政治家が実直に何度も国民に対し説明するのだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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