コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

画像: Toshihiro Gamo

2020.07.15

経営・マネジメント

コンビニの24時間営業問題の本質は『利害の対立』だ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

コンビニの「24時間営業」問題に関し、コンビニ本部は「それが本当にFC店オーナーのためになるのか」という問いに答える責務がある。その関心の矛先がどこにあるかを端的に表すのが「ロイヤリティの算出ベース」だ。

この結果、どういう行き違いが生じるのか。

コンビニ本部としては少しでも売上が立てば「粗利」は押し上げられる。たとえFC店が深夜バイトに5,000円のバイト代を支払って、お客が5人しか来ずに3,000円の売上しか上がらずとも、「粗利」はプラスなのでロイヤリティ額は追加されることになる。だからコンビニ本部としては、何がなんでも店には24時間営業してもらって売上を上げて欲しいのだ。

一方、FC店としては「利益」が増えるのか、それとも減るのかを考えざるを得ない。

3,000円の売上から得られる粗利が仮に1,000円だとしよう。そこからロイヤリティを例えば10%の100円引かれるとしたら、残りは900円。そこから5,000円のバイト代と例えば100円の光熱費を支払って、粗利1,000円-比例費5,200円=▲4,200円の損失だ(売上3,000円-バイト代5,000円=▲2,000円の損失ではない)。

地代や利子などの固定費分があるから少しでも売上を上げたい気持ちがあっても、やればやるほど赤字が膨れ上がるのは明白だ。深夜営業を止めたいというFC店オーナーの主張とはこういうことなのだ。

これが深夜営業することで、5,000円のバイト代を補って余りあるほどの粗利を生むのならばFC店オーナーも喜んで店を開けたいに違いない。詳細は分からないが、それは例えば今適当に挙げた数字の5~6倍くらいは必要なのではないか。

その売上が見込めないと判断したFC店オーナーにとってのベストの策は「深夜には店を閉める」ことなのだ(もちろん彼らだってコンビニ本部から脅かされている「その結果、昼間もお客が減りますよ」ということは十分懸念しているに違いない)。

この利害対立を乗り越える本来の策は、コンビニ本部がロイヤリティ算出のベースを「粗利」から「利益」に変えた上で(もちろんその際は「率」も変える必要がある)、FC店がより多くの利益を上げるための方策をFC店の立場に立って考えることである。それが「共存共栄」ということのはずだ。

しかし寡聞にして、大手コンビニ本部のいずれかがそうした検討をしているという話は聞いたことがない。多分この先もないだろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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